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2010年11月21日(日) 20:22

極限の科学

 ブルーバックス「極限の科学」を読んでいた。低温、高圧、強磁場それぞれについて最新の状況が分かって面白い。  低温は限界すれすれまで到達し、理論が予測するすべての現象が実験で確認されてしまったこと。  それに対して高圧は、自然に遥かに及ばず現在でも100〜200万気圧しか実現できないこと。それも先端を尖らせたダイヤモンドを押し付けるなどという原始的手法に頼っていること。  そんな中で強磁場は2つの点で興味深い。  まずはこれも現状まるでダメで、100テスラさえ容易に実現できない。爆発で磁場圧縮させる破壊型でも500テスラぐらいまで。  コイルガン的なパルス磁場で40テスラぐらいの研究所が多い。そう、何が面白いってプロとアマの能力がそう違わないのである。  鉄芯が磁気飽和する2〜3テスラ前後のパルス磁場は周知の通り、中学生でも簡単に作り出せる。そして楽しくもちょっと危険な実験が大人気だ。  プロでも中学生より1桁大きな程度の磁場を扱っているに過ぎない。  もう1つは理論的な話で、強磁場で人間は死ぬのか?って話題。SFでは死ぬというのが相場だが、血中のヘモグロビンに含ませる鉄が吸引されて血流不良だの血管が引き裂かれるだの眉唾な説明しか読んだ記憶がない。  確かに、無限に強い磁場に晒されても平気ではないだろうが、では致死量はどの程度なのか。  これが、数万テスラと予想されている。ただし、死因は想像とまるで違うし人間以外のあらゆる生物でも同じ値と思われる。  例えば水素分子は電子の軌道を共有して結びついており、2つの電子のスピンは逆方向である。ここに数万テスラの磁場が加わると、電子のスピンが磁場の向きに揃ってしまう。すると、パウリの排他律で電子の軌道が共有できなくなり、水素分子が2つの水素原子に分解してしまう。  破壊される分子はもちろん、水素だけではない。  これは余りに致命的なものの、100テスラぐらいでは何ともない。ペースメーカーが壊れるとかは、別の話である。そして幸か不幸か、人工的に数万テスラを発生する手段は想像すらできていないようだ。

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2009年6月14日(日) 18:31

ループ回生型にゴーサイン

 ループ回生型を考察すると、残念ながら砲口端のハイサイドは省略出来そうにない。だが、更に考えるとスイッチング素子としてはIGBTではなくサイリスターが使えそうだ。つまり、一度ONになったら途中でOFFに出来なくても使い物になる。
 コイルガン発射シーケンスが開始されると、C1の電圧が真っ先に下がる。ここでSCR4が無いと、C4からC1に電流が流れてL4が通電してしまう。

 順番にコンデンサーを放電し、いよいよ最後のC4を放電する時が来る。ここで、まずローサイドのIGBT-L4を先行してONにする。

 すると、SCR4のカソードがGNDにプルダウンされた状態となり、ローサイド素子のような感覚でゲートをドライブ出来るようになる。
 ONにしたハイサイド素子をOFFに戻さねばならない場合は話が厄介だが、最初にONに出来れば後は放置で構わないサイリスターなら単純だ。ハイサイド素子が必要とはいえ、このようにサイリスターを使えば製作の手間はローサイドと大差ない。
 暴発耐性が落ちるが、そもそもこれは砲口端の話であり直前までパチンコ玉は散々加速されて来てる訳で、暴発もへったくれもない。

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2009年6月5日(金) 21:26

性懲りもなくまた計画

 何度も構想はするがすぐボツになった超多段式コイルガン計画。性懲りもなくまた動き始める。今回は、製作の容易なハイサイド抜きのタイプであり、ハイサイドありのストームタイガーと比較することで実用性の検証を行う目的もある。当初は10段あたりで始め、見込みがありそうなら拡張する。

 上が、1/24ストームタイガ搭載の順送り回生型放電回路。そして下が、今回の超多段式計画で試すループ回生型放電回路である。
 常に1つ銃口寄りの隣接コンデンサーに電荷を回収することでハイサイド素子を廃止し、銃口端のコンデンサーは砲尾端コンデンサーに回収する。こうして、ローサイド素子だけにする。最終的にはC4の電圧よりC1の電圧が高くなるため、電流がL1を通してC2に流れL2を通してC3に流れ、後方のコイルがパチンコ玉を引き戻す力を発生させる。だから、4段程度でループ回生やるのは性能を劣化させるだろう。

 ところが、L1などコイルはインダクタンスが大きいため、1万分の1秒というコイルガンの時間スケールで見た場合には電流の増大に時間を要する。10段20段となればそれなりのインダクタンスを持ったコイルが10個とか20個直列に入ってるから、銃口に近い側のコイルはなかなか電流が増えないはずだ。
 一方でパチンコ玉は最高速に達しているから、目立った悪影響が発生する前に銃口から十分な距離を飛翔し離れていると皮算用される。だから、段数が多いコイルガンではループ回生が実用になるのでは?と踏んだ次第。

だが冷静に考え直すと、ループさせては駄目なわけで。

 発射直後に、C1の電圧が下がり始める。一方でC4はフル充電されている。だから、L4を通してC4からC1に電流が流れてしまうのだ。
 どうやら銃口端だけはハイサイドを残すか、銃口端だけは回生用に専用コンデンサーを用意するしかないようだ。次のチャージを行う直前に回収専用C5とC1を接続すれば、C5の電荷がC1以下へと放出される。コイル段数が増えるほど、回収専用を用意する無駄は小さくなる。

 後は、ネットの投入ジュール数がどの程度減るかだ。
 放電と回収を別のコンデンサーで行うハイサイド省略型は、コンデンサーに電荷が残存し易い。それによって2発目以降の投入ジュール数が減る。つまり、効率が同じならパチンコ玉の運動エネルギーも減る。
 回生型と称しているが、実際には回生は手段であって目的ではない。目的は、サージを余り発生させずにコイル電流を高速減少させることだ。コイルガンの性能に影響する最大要因は、コイル電流をいかに素早く減らせるかだと思う。回生型はそのために開発したものであって、投入ジュールを節約するためではない。弾丸のエネルギーはあくまで大きくしたい。

 少しでも残存電荷を減らす放電タイミングを探る上で、オシロスコープが大活躍するだろう。
 多段式はコイルが長くなるため、銃口端から砲尾端への引き回す配線も長くなる。それがどんな影響を及ぼすかなど細々した問題もいろいろ想定される。それらは実地に検証して行きたい。

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2009年3月14日(土) 17:12

夢想妄想皮算用

 至近距離で空き缶などを撃つならプロジェクタイルの形状はどうでもいい。しかし射撃を楽しみたいなら、球形弾を使うしかない。スピンを掛けるのも矢羽根で姿勢を安定させるのも、コイルガンでは非現実的だ。そうなると、10メートルあるいはそれ以上遠いマトを狙う場合に選択の余地はない。
 球形弾は加速し難いので、短いコイルをびっしり並べる現状の方式を使いたい。投入ジュールを増やすにしても、一段あたりのジュールは増やさずに段数を増やす方向性だ。

 鈴商11ジュールを2本組み合わせた22ジュールを1単位とし、n単位(n+1)段回生回路となる。1段あたりのコイルを16〜17ミリとすると、36段で砲身の全長60センチ前後。P90のようなプルバップ方式のライフル形状に組み上げれば、かなりコンパクトに感じられるだろう。コイルガンの場合、威力をアップしようとすればコイルがどんどん長くなる。コイル全長が制約になり、銃の許容全長が必然的に威力を制約する。
 銃身だけ伸ばせば良いエアガンや火薬銃と異なり、コイルガンは銃身周りにいろいろくっつく。だから、短めに設計しないと重くて扱えなくなるだろう。

 コンデンサー35単位770ジュールで、36段回生回路。1単位あたりプロジェクタイルに1ジュールを与えられれば威力は35ジュールとなるが、思い切り皮算用だろうな (^_^;)
 その皮算用でも効率は1/22すなわち4.5〜4.6%であり、決して夢物語ではないはずなのだが・・・というかこれぐらい出てくれないと、スリングライフル作った方がマシってことになる。少なくとも、パチンコ玉なら秒速100メートル。27.5ジュール出ないようなら失敗。これで効率にすると3.5〜3.6%です。

 充電に関しては、入力電圧を高くすればコンデンサー充電器の出力を急激に大きく出来る。コイルガン構想の初期に確認済みだ。ラジコンバッテリーを2本直列にすれば、出力50ワット以上を狙える。770ジュールを15秒以内にチャージするのは十分に可能だ。

 こうして考えると、妄想だけならコイルガンは結構な武器になりそうに思える。ところがそれほど簡単ではない。
 プロジェクタイルを加速すれば、反作用で銃身すなわちコイルに大きな力が加わる。だが、コイルは強度的に劣る銅である。現実的な長さで武器として使えるような加速を得ようとすれば、コイルが物理的にヤバい。そもそも効率が低過ぎる。投入エネルギーの9割以上が熱と消えるが、その大半はコイルで発生する。例えば車載にして超強力なコンデンサー充電器を用意し、連射出来るようにしたとする。それこそ機関銃真っ青の勢いで銃身が溶けるでしょ (^_^;)
 自分はエポキシで固めることによりコイル強度をアップさせているが、エポキシの耐熱性は銅より遙かに劣る。銃身が溶ける遙か前にエポキシが燃える。

 狩猟に使用可能なほどの威力は出せるが、連射は効かない。そういう性質も、クロスボウやスリングショットに似ている。
 また威力アップを追求すると排熱がネックになるという点では、レーザー銃そっくりだ。

 さて、必要なパーツはほぼイメージ出来るが、それらをどのような形状に組み立てるのが最適だろうか?
 40段とか連ねても、コンテンサーや放電回路は1段1段を個別にかなり自由に配置出来る。だが、砲身コイルだけは別だ。こればかりは配置の自由は全く無い。つまり、先に砲身コイルを組み立てるべきなのだ。そして、各コイルとの配線が最短になる位置に個別の放電回路を取り付ける。続いて、各放電回路との配線が最短になる位置にコンデンサーを取り付ける。
 最後に、スイッチング制御用の配線を行う。コンデンサー充電器とバッテリーは、それこそどこにでも置けるから、銃としての使い勝手や重量バランスを考えて決めれば良い。

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2009年3月11日(水) 17:14

コイルライフルを作ろう

 今はコイルガン戦車の方を進めているが、通常のコイルライフルも作りたい気分になって来た。回生回路に使うダイオードからアレコレ考えを巡らせた末である。
 そもそも、機能が形状を決定するのが本来の姿である。戦車の形状は火薬砲を運搬し防御するのに適した形状を追求した結果である。コイルガンの形状も、コイルガンの機能を実装した結果として生まれるべきだ。ところがラジコン戦車にコイルガンを積むと、実装形状は戦車すなわち火薬砲の都合を強制される。これが非常にうっとうしい。話が逆になっている。
 あくまでコイルガンの都合で形状を決定し、ストレスの溜まらない製造を行いたい。そう感じるから、コイルガン戦車を製作すると並行して通常のコイルガンも作りたくなるのだ。

 回生回路にショットキーバリアダイオードが使えれば、話がいろいろ単純化される。信頼性の向上が期待出来るため、超多段式が実用になるかもしれない。しかし更に冷静に考えると、結局問題なのは2カ所のハイサイド・スイッチング素子だけなのである。ローサイドはPIC直結の抵抗1つで調整しているため、製作もそれほど大変ではないし信頼性も杞憂に近いのではないか。
 2カ所だけの問題であれば、少々豪勢にパーツを使うことも許される。また、空間の限定されたラジコン戦車ではなく手持ちの銃という形式なら、2カ所のユニットが肥大化しても大勢に影響しない。

 ハイサイドのスイッチングでは、ゲートドライブの方法が問題だ。TLP250のようなフォト・ドライバーが使えれば良いが、2つの障害がある。
1)スイッチング速度を制御出来ない。
2)使用可能な電圧が高過ぎる。

 まず1)だが、順回復時間を待つ間にサージ電圧を定格以内に抑えるため、スイッチング速度を適度に落とさねばならない。ところが、TLP250では速過ぎる。これに関しては、ショットキーバリアダイオードが使えれば気にせずに済むようになる。現状のままでも、ゲート電流を定格に押さえるために直列する抵抗の値を増やすことでスイッチング時間を制御出来る可能性はある。となると、障害にならない可能性が高い。
 次に2)だが、IGBTのゲートは5V前後の極めて狭い範囲でドライブせねばならない。しかしTLP250は10V以上ないと使えない。これに関しては5V電源で使える類似品を探すか、ゲートに10V以上掛けられるスイッチング素子を探すかすればOKだ。
 まとめると解決策は

1−1)ショットキーバリアダイオードを使う
1−2)ゲート直列抵抗の適正値を探り当てる
2−1)電圧5Vで使えるフォト・ゲートドライバーを探す
2−2)ゲートに10V以上掛けられるスイッチング素子を探す

 となる。1−と2−は両方同時に満たさねばならず、−1)と−2)は一方が満たされねばならない。これを解決できればハイサイド2カ所の信頼性もアップする。そうなれば超多段式にゴーサインが出せる。
 1−1)に関しては、やはり高耐圧型の入手が難しい。コイルガンのように極端な条件で動作させられるパーツは大抵の場合、入手に大騒ぎだ。1−2)で何とかするとしても、そのためには使用スイッチング素子を確定させねばならない。
 2−2)はそもそもIGBT自体なかなか売っていない。FETだと最強K3132でさえパルス耐電流200Aしかないので、砲尾端で3個・銃口側で6個を並列せねばならない。それだけで1万8千円か (^_^;)
 若松の通販だと IRG4PC40UP というIGBTがある。パッケージサイズはK3132と同等でパルス耐電流も160Aしかないので、並列数は4個と8個に増える。しかし単価は630円なので、コストはかなり違う。ゲートも20VまでOKなので、TLP250で駆動可能だ。

ウクライナ製20段式コイルガン

 IRG4PC40UP + TLP250 でハイサイドのスイッチングを行うとして、スイッチング速度を適正化出来るかどうか疑問がある。というのも、仕切電圧が6V前後なので、TLP250による12V前後での駆動を行った場合、高速に仕切電圧を通過してしまう。抵抗1本で調整し切れるのか?実験中に「あっしまった失敗だ」となるたびに、単価630円のIGBTが幾つかまとめて死亡する。
 本格的にコイルガンの開発やるなら、そろそろある程度まっとうなオシロを買うべきだな。大きめの抵抗値を入れて思い切りスイッチングを遅くし、オシロでサージ電圧をモニターする。そしてサージを毎回確認しつつ抵抗値を徐々に減らしていく。これで安全領域が計れるはずだ。同様の作業は各所で必要になるだろう。ローサイドのゲートドライブは抵抗2KΩが適正という件に関しても、オシロで状況を確認しておいた方がいい。

 ゴーサイン出せそうな気がする。

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