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2023年11月11日(土) 20:58
コンデンサーを充電できるようになったが、コイルガンを動作させるにはそれ用の制御基板も作らねばならない。取り合えず1段分の回路図。
有用なスイッチング素子が最近登場してるかも?と一応チェックしたが、見当たらない。MAX186 が倍以上に高騰してる例を出すまでもなく、コイルガン製作に関しては10年前より悪くなってるかもしれない。ターンオフしないならサイリスターで良いのだが、10年前より明白に入手し難い。手持ち在庫のある GT10G131 をまた使うことにする。
回路図の中で製作が最も面倒なのは、実はメインコイルである。自分がこれまで作ったコイルガンからコンデンサー容量が変わるし、回生型でもなくなる。そのせいで、ノウハウが一部しか役に立たない。コイル製作を試行錯誤し実験して、正式な仕様を決めねばならない。ただでさえコイル製作が面倒なのに、ほんと参る。
そこで、最初は既存コイルを使って情報を集めたい。でも過去に作ったコイルで手元に残してあるのが、ストームタイガーの主砲しかない。
written by higashino [コイルガン設計] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
2019年3月6日(水) 21:40
磁束飽和により、吸引力に上限ができてしまう。
そう結論付けてしまったが、バッチ処理の実現により鉄球位置を変化させたグラフが作れるようになると、即断できないことに気付いた。
すなわち、磁束が強くなるとコイルから離れた位置でも充分な吸引力を発生可能になる。磁束が相対的に弱い離れた位置の方が、磁束飽和が遅れる結果として、吸引力のピークが砲尾側にズレて行く。
鉄球が半分だけコイルに入った位置に固定して計算していたのでは、傾向を誤る可能性がある。もっと探るべきだ。
そう考えて、1000A通電でのシミュレーションを、鉄球位置を変化させつつ実行してみた。すると、なかなか凄いグラフができた。
いずれも、鉄球が半分だけコイルに入った位置は吸引力のピークから程遠い。コイル長5ミリでは、それより更に2.5ミリ砲尾側に引っ張り出した位置が最強だ。10ミリコイルでは3ミリ、15ミリコイルでは3.5ミリ、そして20ミリコイルになると4ミリも引き出さねばならない。
磁束飽和するということは鉄心の意味が小さくなるということであり、余りに磁場が強くなって鉄芯の無い空間の磁束密度が上がるようになると、相対的に鉄心の存在が小さくなるのだろう。1000Aでの吸引力は、空芯コイルの吸引力を鉄心無視でビオ=サバールの公式から計算したものに近い。
しかし、コイルが長くなると、ビオ=サバールの公式とは異質の現象が発生する。鉄球がコイル中心から少しズレると、逆方向に吸引力が働くのだ。
また、磁束飽和しない場合だと、長いコイルほどピーク時の吸引力は大きくなる。しかし1000Aでは、長さ10ミリのコイルが最もピーク吸引力が大きい。鉄球サイズが関係していそうだ。
更に吸引力20キロ以上のエリアは、コイル長10〜20ミリまで変化しても区間幅約6ミリと変わらない。そうなると、短いコイルの方が効率が良いのは明らか。このあたりの異様な大電流になると、完全にコイル長10ミリが優位に立つ。ただし、スイッチング素子等の負担が大き過ぎて、ほぼ実用不可能な実装である。理論的興味だけであって、現物の設計には役立たない。
逆方向に吸引力が働くのは、シミュレーションの限界かもしれない。何であろうと理屈には適用可能範囲がある。目安1000Aなんて現実離れした電磁石では、シミュレーターが正常に計算できていないのかもしれない。
そこで、ParaView を使用。コイル長20ミリで位置5.5ミリという、もっとも吸引力のマイナスが大きな状態を可視化してみた。 位置5.5ミリとは、コイル中心と鉄球前端が一致する座標。
鉄球の前方にプラスの吸引力、後方にマイナスの吸引力が働く。これは、常識的な電流の場合と同じ。しかし、吸引力の絶対値とその範囲が異なる。磁束飽和により吸引力の絶対値も飽和してしまうため、鉄球の前後で吸引力の絶対値の差が小さくなる。
そして、マイナスの範囲が鉄球の半ばよりも少し前方まで回り込んでいるこれにより、マイナスの方が大きくなったわけだ。
作用反作用の法則により、コイルが鉄球を吸引すると、コイルは鉄球と逆側に引っ張られる。だから、鉄球が赤いとコイルは青く、鉄球が青ければコイルは赤くなる。鉄球の半ばより前方寄りの青は、コイル砲尾寄りの赤に対応している。
分かり易いようにグラフのスケールを狭め、プラスとマイナスが分かり易いようにしてみた。
これは、300Aと1000Aを交互表示させて違いが比較できるようにしたGIF画像。
300Aでは鉄球が主導的な役割を果たし、鉄球の前後でコイルの青と赤が切り替わっている。
それに対し1000Aになると、コイルが主導的な役割を果たし、コイルの中心付近を境にしてコイルの青と赤が切り替わっている。
そしてコイルの赤に引きずられるように、鉄球の青が前方に進出している。だから、鉄球トータルの吸引力がマイナスになっている。
鉄球は、磁束を強める。しかし、磁束飽和が発生する。
それに対しコイル巻き線内部は、磁束が強められない。その代わり、磁束飽和しない。
結果として、電流が非常に大きくなるとコイル巻き線内部の磁束が鉄球を上回る。磁束飽和した鉄球を逆転してしまう。
そして、主役が交代する。
以前はB-H 曲線設定ファイルの範囲外だと判断してしまった(特定位置だけ計算させたせいで判断ミス)が、10000Aも計算させたみた。凄まじいグラフが出現した。猛烈なマイナスの吸引力が発生している。しかも、プラスの吸引力のときみたいに飽和していない。
1000A同様に、最もマイナスが大きな20ミリコイルの位置8.5ミリを確認してみる。
これもグラフのスケールを狭めて、プラスとマイナスが赤青に分かれるようにしたものだ。
傾向は1000Aと似たようなものだが、コイルが余りに主導的になり過ぎて、鉄球を完全に圧倒してしまっている。
鉄球の磁束が2.5テスラあたりで飽和してしまうのに対し、鉄球がない部分の磁束は飽和せず、10000Aでは最大79テスラに達する。
吸引力がマイナスというのは、砲尾側に飛び出すということ。前後入れ替えれば、凄まじい推力で加速される。
この図から分かるのは、磁束飽和を無視して強引に力ずくでプロジェクタイルを加速するコイルガンの姿だ。
ほんと、計算は広範囲に行わねばならない。特定位置でだけ計算させたのでは、目を閉じて象をなでるようなものだ。
コイルガンは、電流を増やせば増やすほど、威力がガンガン上がる。磁束飽和などブチ破って力ずくで強引に。
長さ20ミリしかない単弾式コイルガンでも、10000A流せば秒速300メートルぐらい出そうだ。
ただしそれは、理論上の話に過ぎない。現実には、超伝導コイルでも20テスラぐらいしか出せない。常伝導コイルで79テスラを出せる訳が無い。実行すれば、一瞬でコイルが蒸発してしまうだろう。ジュール熱もそうだが、電磁力に耐えられず弾け飛んでしまう。
火薬銃は、強靭な鋼鉄で銃身を製作できる。だが、コイルガンは銅というヤワい素材だ。火薬銃なみの性能は、素材的に不可能。
20ミリの単弾式コイルガンで秒速300メートル出そうとすれば、超伝導ダイヤモンドでコイルを作るしかあるまい。加えて巨大な冷却装置と、磁場圧縮の実験装置なみのコンデンサーバンク。
思考実験は楽しいが、ADVENTURE は誘導電流をシミュレートできない。10000Aも流して鉄球に生じる誘導電流が、どんな影響を与えるのか?それは分からない。
written by higashino [コイルガン設計] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
2019年3月5日(火) 21:42
GUIは便利だが、自動処理には向いていない。
例えば、鉄球とコイルの位置を少しずつ変化させながら、吸引力を次々に計算させようとする。
GUIだと、条件が変化するたびに人間が手作業でメニューを操作せねばならない。猛烈な手間が掛かる。最初の1回に成功するまでは断然GUIが楽だが、いったんノウハウが確立されてしまうと手間が掛かるだけである。
そんなことは誰でも実感できるので、一見とっつきにくいコマンドラインツールの方が遥かに使い勝手が良い。コマンドラインツールであれば、バッチ処理で自動的に次々に計算を行える。同様の理由により、物体形状定義も豪勢なCADツールで行うより、テキストファイルに書いておける方が遥かに実用性は上だ。
ADVENTURE PROJECT は東大発らしく、さすがに「分かっている」。GUIを使わずに gm3d exe ファイルを生成し、exe ファイルをバッチ処理で実行させることができる。
OSが Windows ではなく Linux なのも、コマンドラインをメインに考えれば妥当な選択だ。
そして Windows 移植版も、GUIは多数の exe を適切なパラメーター与えて呼び出しているに過ぎない。
そこで、AdvMagOnWin 用の自動実行プログラムを作った。
コイル幅や高さ、位置に電流。それらを与えると gm3d ファイルを自動生成し、適切なパラメーターで exe を実行するバッチファイルを生成する。最後にそのバッチファイルを実行してやると、1回の計算が自動的に進む。吸引力を計算するプログラムも最後にくっついていて、与件と結果をCSVファイルに出力。
あとはループで回せば、条件を少しずついじった計算が勝手に進行する。
1回の計算に必要なのは、ほぼ2分以内。これで外出中や睡眠中に、勝手に計算させておける。
まあスムーズに自動実行してくれるまでは、1日格闘する必要があったけど。
以下、コイル中心と鉄球中心が一致する位置を0としている。
長さ5ミリのコイルなら、鉄球が半分だけコイルに入った位置が2.5ミリで、コイル端と鉄球の端が接する位置が8ミリということになる。
こういう短いコイルの場合、鉄球が半分だけコイルに入った位置よりも砲尾側に少し出ている方が大きな吸引力になる。
長さ10ミリのコイルなら、鉄球が半分だけコイルに入った位置が5ミリで、コイル端と鉄球の端が接する位置が10.5ミリ。
100Aだと、鉄球が半分だけコイルに入った位置が吸引力最大。
コイル長5ミリでも傾向はあったが、長さ10ミリになると明確に分かる傾向・・・電流が増大するほど、より大きく砲尾側に出ている方が吸引力大。これは、コイルから離れると磁束が弱くなり、飽和も遅れるからだと考えられる。
長さ15ミリのコイルなら、鉄球が半分だけコイルに入った位置が7.5ミリで、コイル端と鉄球の端が接する位置が13ミリ。
傾向は、長さ10ミリの場合と、ほぼ同じ。
長さ20ミリのコイルなら、鉄球が半分だけコイルに入った位置が10ミリで、コイル端と鉄球の端が接する位置が15.5ミリ。
コイルが長くなるほど、100A時の吸引力ピークは「鉄球が半分だけコイルに入った位置」を基準にして銃口側コイル中心側にズレる。しかしおおむね、鉄球が半分だけコイルに入った位置近辺で最大となる。電流ゼロからスタートの場合、最初は100Aよりもっと小さく要するに磁束飽和していない。その場合は、鉄球が半分だけコイルに入った位置が最大加速を得られる。
元祖ストームタイガーの場合、第1段コイルの長さが5ミリで、第2段は15ミリ。第1段と第2段の同時通電開始により、初期は長さ20ミリのコイルとして働いた。そうすると、「鉄球が半分だけコイルに入った位置」から開始することで、吸引力の大きな区間を有効活用できていたことが良く分かる。
速度ゼロ・電流ゼロでスタートする初期状態の場合、「鉄球が半分だけコイルに入った位置」に保持しておくのがベストという経験則は、こうして成立していた。
しかし第1弾コイルを長さ10ミリとし、それ単独通電から開始するのであれば、更に1ミリていど引き出した位置から射撃する方が威力を増大できそうだ。まあこれは微妙な話であり、1ミリより遥かに高精度にパチンコ玉の初期位置を一定化する方が遥かに重要だ。
written by higashino [コイルガン設計] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
2019年3月4日(月) 21:33
どうやら、インダクタンスのシミュレートして計算するのは難しそうだ。有料ソフトを使えば、どうということはないのだが。
結局のところ、インダクタンスは近似式を仮定してコイルガンのシミュレーターを作り、実射結果と合うようにモデルを修正して行く、という手法を採らざるを得ないのではなかろうか。
鉄芯ありのインダクタンスは、磁界の強さで変化するし周波数でも変化する。当初思っていたよりも遥かに厄介で、とても手に負えない。
調べれば調べるほど、この世にコイルガンのシミュレーターが存在しない理由を実感できる。ありえないほど複雑だ。それなのに、どうしようもなく実用性がない。
プロジェクタイルの加速力は、鉄材の磁束飽和で上限が決まる。磁束密度の差は、磁束飽和とゼロの場合が最大値であって、それを上回ることは不可能である。そしてその理論上限の加速で、銃身長を加速し続けた場合の速度が、理論上の最高弾速となる。それは現実的な設計の場合、武器としては役立たずと言わざるを得ない低さだ。
シミュレーターを作れるほどの研究者にとって、コイルガンなどに時間を潰すのは無駄でしかない。
桁違いに強力な磁場を発生させることで、磁束飽和したプロジェクタイルを力ずくで更に加速させる・・・ということは不可能なのだ。どんなに力ずくで頑張っても、限界は超えられない。超伝導リニアなどが桁違いの磁場で常伝動リニアを圧倒できるのは、車体側も軌道側も、両方とも空芯コイルであって磁束飽和しないからである。
ただし、オモチャとして充分な性能を出すことは可能だ。
エアガンの規制ジュールでは物足りないので、もうちょっとパワフルな合法遊具が欲しい。そういうニーズには合致する。一般向けには、そういうニーズにはスリングライフルを薦めるが、ラジコン搭載用としてならコイルガンの方が扱い易い。
さて、ここでコイル巻き線に使用する導線の太さについて考えてみたい。同一外形のコイルを製作するにあたり、太い導線と細い導線は、どちらがベターなのだろうか?
導線の太さは、どのように選択すべきなのか?
ここで、コイルの断面積あたり電流が一定として、太さが2倍異なる導線の得失について考察する。以下の表に存在する数字は、すべてが相対値である。
導線直径 | 1 | 2 | 太さが2倍違う場合の比較 |
導線断面積 | 1 | 4 | 導線直径 ^ 2 |
抵抗値/m | 4 | 1 | 導線断面積に反比例 |
巻き数 | 4 | 1 | 導線断面積に反比例 |
インダクタンス | 16 | 1 | 巻き数 ^ 2 |
導線長 | 4 | 1 | |
抵抗値合計 | 16 | 1 | 抵抗値/m × 導線長 |
導線電流 | 1 | 4 | 導線断面積に比例 |
電圧降下量 | 4 | 1 | 抵抗値合計 × 導線電流 |
ジュール熱 | 1 | 1 | 電圧降下量 × 導線電流 |
太さが変わっても、ジュール熱は変わらない。すなわち、コイルの発熱・無駄に消えるエネルギーは変わらない。
電流は、太い方が大きくなる。つまり、スイッチング素子の負担が増し、コイル以外の回路におけるジュール熱も増える。
インダクタンスと電圧降下量は、細い方が大きくなる。つまり、電流が増大し難くなりLC共振周期も長くなり、通電時間が長くなる。
よって設計の基本ポリシーとしては、通電時間の想定から始まる。
通電時間と電源コンデンサーの容量が決まると、それを実現可能なインダクタンスの最大値が分かる。
そして許されるインダクタンスの範囲内で、最も細い導線を選択する。ただし前述の通り、インダクタンスの計算は一筋縄で出来ない。
通電時間はプロジェクタイルの速度とコイル長が絡む。高速になっているほど通電時間は短くなければならないし、コイルが長いほど通電時間は長くできる。コイルの長さは重要パラメーターということになるが、適切な長さを判断するにはシミュレーションと実験の裏付けが必要だ。
コイルを短くしたいなら通電時間も短くなり、インダクタンスを小さくせねばならない。それには太い導線が必要で、大電流を扱うスイッチング素子が制約条件となる。
電源コンデンサーの容量も設計パラメーターに含まれるため、最適なコイルを実現できてもコンデンサーを増設すると最適ではなくなる。
超強磁場を磁束濃縮法で作る場合など、爆縮用磁場を発生させる外部コイルは、たった1巻きなのが通例である。これはピーク磁場(=ピーク電流)まで可能な限り短時間で到達せねばならないため、インダクタンスを最小にする必要があるからである。スイッチング素子には究極の大負荷が掛かるので、半導体素子は使用されない。
written by higashino [コイルガン設計] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
2019年2月28日(木) 21:35
コイルガンのシミュレーションは厄介だが、いざ吸引力がシミュレートできるようになった段階で、想像よりも更に厄介であることに気付いた。
まず、磁束飽和。磁束飽和があるため、複数のコイルから受ける吸引力は個々のコイルから受ける吸引力の和にならない。磁束が重複することで飽和し易くなり、吸引力は個々の和より小さくなる可能性がある。そしてその具体値は、単純計算ではなくシミュレーションせねば分からない。
コイルが1つなら良いが、回生型では複数のコイルを密着実装させる。そのため、鉄球は複数のコイルから無視できない力を受ける。コイルと鉄球の相対位置を変化させつつシミュレートしモデル化を行ったとしても、それでコイルガンのシミュレーターを作れるかと言えば否なのだ。
いきなり回生型を丸ごとシミュレートしようというのは、無謀だ。まずは単段式のシミュレーションを目標にすべきだろう。
単段式における最適コイルが設計可能になれば、それを合体させて多段式にしても良いだろう。それでは確かに磁束飽和の影響で最適な単段式コイルガンにはならないかもしれないが、漫然と勘で個々のコイルを設計するよりはベターなものになる可能性は高い。
また、センサーで通電タイミングを測る通常の多段式であれば、複数コイルの同時吸引は無視できるほど小さく、個別コイルの最適設計さえ出来ればOKだと思われる。
単段式と言っても、多段式の2段目以降を1つ取り出したコイルも想定する。すなわち、鉄球の初期速度はゼロと限らない。
それはともかく、もう1つの重要パラメータがインダクタンスだ。インダクタンスは実測可能だが、実測するためにはコイルの実物が必要になる。机上で「有望そうなコイル」を設計しただけでは、インダクタンスは分からない。だが、コイルの試作は非常に面倒臭い。常に実物が必要だと、設計効率が非常に悪くなる。時間もそうだし、コスト的に不利なのも言うまでもない。
要するに、コイルの吸引力がシミュレートできるようになったのだから、コイルのインダクタンスもシミュレート可能な無料ソフトは無いのか?という話。
空芯コイルのインダクタンスを求める方法は簡単に見つかるが、欲しいのは内部に鉄球が入り込んだ状態でのインダクタンスである。鉄球が存在するとインダクタンスは何割も変化し、それはコンデンサーから通電した際の電流変化に大きな影響を与える。
空芯コイルのインダクタンスが分かっても、それでシミュレーターは作れない。
無理なら当初予定通り、実物コイルを製作し実測するしかない。そう思っていたのだが、どうやらそれでは済まされないことが判明した。
空芯コイルのインダクタンスを計算する場合、比透磁率という概念が入って来る。これは空気の透磁率を1とした場合の相対的な透磁率のことで、空芯コイルでは1として計算する。だから、みんな特に気を払っていない。しかし鉄球が入り込んだ場合、透磁率は無視できない。これが鉄芯なら鉄の透磁率を使えば良いが、鉄球の場合は計算式では無視で恐らくシミュレーションが必要になる。
だが、問題はその手前に存在した。
そもそも、軟鉄の透磁率とは、どれぐらいなのか?
実は、これが可変だったのだ。磁界が大きくなると、軟鉄の透磁率は大きくなる。そしてある程度まで来ると、今度は逆に小さくなる。変動範囲は120〜450ぐらいで、ノンリニア。
つまり、小電流で吸引力を実測しても大電流での吸引力を単純計算できないのと同様、通電しないコイルでインダクタンスを実測しても通電時のインダクタンスとは異なっており、しかも単純計算することもできないのだった!
止むを得ず軟鉄の比透磁率変化曲線を適当な式で近似したとしても、鉄芯コイルのインダクタンスを計算できるだけである。鉄球それも位置任意、という物体が入り込んだコイルのインダクタンスを計算できる訳ではない。実測しても、換算できない。
吸引力同様で、インダクタンスを計算可能なシミュレーターが必要だ。そんな無料ソフトは、存在するのだろうか?
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