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2010年04月の記事

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2010年4月30日(金) 21:06

特殊な光ファイバー

 ファイバーレーザーの共振器に相当する光ファイバーは通常のものと異なり、概して特殊な3層構造になっている。
 芯は直径10ミクロン程度と極細で、ここに蛍光物質をドープしてある。蛍光物質の種類で発振波長が決まる。Nd:YAG
の1064nm に対し 1080nm 前後が多いので要注意である。1080nm では位相整合温度が高くなり過ぎて、波長変換にYAG用
PPMgSLT を流用出来ない。
 変換効率的にも、励起用レーザーダイオードの波長と発振波長の差が大きいほど損になる。

 中間層はコンマ数ミリと大部分を占めていて、ここに励起用LDの光が導入される。波長は蛍光物質に対応して異なり、イットリウム系では
970nm あたりが多い。
 外層は単純な保護層ではなく、励起用LDの光を散乱させるようになっている。散乱させるがあくまで光ファイバーなので、光を外部に逃がすことはない。励起光は散乱されたまま封じ込められ、光ファイバー内部に均等に分布する。
 蛍光物質をドープした細い芯にぶつかった励起光だけが吸収され、1064nm あるいはそれより少し長い蛍光を発する。最終的にはほぼすべての励起光が均等に吸収される。

 光ファイバー内部に閉じこめるため、導入さえすれば励起光の吸収効率は非常に高い。問題は、コンマ数ミリの中間層なんて微妙な物理的位置に励起用LDの光を余さず導入する方法である。
 端面導入方式もあるが、それは低出力の場合に限られる。レーザー銃のようにハイパワーなものだと、側面導入せざるを得ない。これはホットな課題で、メーカーはいろいろな手段を試している。アマチュアが工作出来るようなレベルの話ではないため、既存のスペックを受け入れるしかない。
 要するに、共振器に相当する光ファイバーと励起LD導入用の光ファイバーは事実上一体の製品なのである。

 共振器に相当するファイバーは、端面にミラーの役割をする光ファイバーを取り付ける。
 励起LD導入用のファイバーには、光ファイバー出力の半導体レーザーダイオードを取り付ける。
 いずれも、光ファイバーが相互接続可能でなければならない。組み合わせの制約は大きく、パーツのリサーチが大変なことになっている。

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2010年4月29日(木) 21:18

さあゴールデンウイーク

 さて、いよいよゴールデンウイーク。
 いつものことで、休みに入ると実験は休止状態になります。旅行したりして家に居ないからです。とはいえ今年のGWは周知の日程で、今日は日曜と変わらない。それでも実験は休み。

 まあ、ちょっと休みたい気分なので。

 ここでGWに入るというのは、気分転換には良いタイミングだと感じます。
 レーザー実験装置一式を別の机に移動させたい。それには結構な掃除が必要で、それが面倒。でも掃除のキッカケにしないといつまでも部屋が片づかない。

 ファイバーレーザーは光軸調整が不用な一方で、ファイバーの太さや断面構造の問題があります。バルクの光共振器なら所定の位置にパーツを置きさえすればいろいろな物理サイズのパーツが使えます。1インチと半インチのミラーを組み合わせてもいい。ところが光ファイバー同士というのは、接続可能な組み合わせが決まっている。ファイバーレーザーを構成するパーツを収集する場合、相互に接続可能な光ファイバーでなくてはなりません。
 ただでさえファイバーレーザーはパーツの入手元が限定される上に、この接続性まで考慮しなきゃいけない。うっかり選択を誤ると、後々まで祟ってしまう。だから、相当に広範囲にパーツの情報を集めねばならない。

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2010年4月28日(水) 22:47

撤退準備

 実験装置はまだ暫く組んだままにしておく。
 正式な出力ミラーで念のために共振を試したりする予定だからだ。今更感はあるものの、大して手間が掛からない実験ならやっても構わない。
 リアミラー調整済みの場合、後から出力ミラーを動かしても元に戻せることが判明している。つまり、出力ミラーだけを交換して共振実験するのはそう手間ではない。

 本当なら出力ミラーと増幅器の間合いを変化させて試すことも可能だが、それにはミラーマウントを動かせるようにせねばならない。こうなると最初からオートウエルドで接着したのは結果的に失敗だったと言わざるを得ない。単純なネジ止めであればネジを外してL字アングル沿いに動かすことで、容易に間合いを変化させて実験出来た。
 今となっては間合いを変化させての実験を行うのは手間が掛かり過ぎる。

 共振器が安定条件を満たしまくっているのに共振しないのはなぜか?
 内部に定常波が出来るためには、ミラーの位置が定常波の節の部分に一致せねばならない。通常はレーザー結晶が発する蛍光の波長は少しバラ付いているため、共振器長の整数倍にたまたま一致した波長が定常波となる。しかし熱レンズの影響が大きくてしかもいびつな屈折状態になっている場合、適合する波長が存在しないという場合もあるのかもしれない。
 だとしても、それを解決する方法がないので情報としては役に立たない。共振器長を変えると偶然に解が発生する可能性はあるが、仮定に仮定を積み重ねた話に過ぎず試行はペイしない。

 光軸調整用レーザーは合わせ鏡の中を何往復もしてから出てくる。つまり内部では波長が干渉し合っている訳で、共振器の長さがコンマ数ミクロン変動しただけで出力光の強さが大きく変動するはずだ。ビデオカメラで観察した回折格子がランダムな明るさ変動している理由はおそらく微振動だろう。
 どんなにガッチリと組んであって振動も与えていなくても、長さ7〜8センチの共振器が0.1ミクロンの変化を示すのは不思議じゃない。だけどそれはまた、定常波が不安定になるのに十分だという意味でもある。

 問題は、実験室に据え付けて振動厳禁扱いできる装置を作ろうとしているのではないって点。レーザー銃だから手持ちで振り回す。たまたま共振しても、ちょっと振動与えたら不安定になりましたでは使い物にならない。あれこれ考えると結局ファイバーレーザーしかないとの結論に至る。

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2010年4月27日(火) 21:03

計画は終了しました

 光軸調整出来たところで、増幅器に通電。1064nm 選択透過フィルターを通して観察する。

 三日月は出力ミラーの端で、中央の光点が Nd:KGW 棒本体である。蛍光が捉えられているが、ただそれだけ。別に共振してはいない。
 ロッドの輝きは上下に分かれそうな気配で、励起が欽一ではなさそうだ。しかし改善する工作は無理。

 ミラーマウントは向きの調整だけならネジ2本で出来る。しかし自分が使っているのはネジ3本のタイプなので、前後に2ミリ程度は間合いを変えられる。
 共振器は長さが少し変わると共振することもあるので、変化させてみる。変化させた後は
VECTOR 1064 のパターンで向きを調整出来る。昨日よりも多くの回折格子が見えることもあったが、共振しないことに変わりはない。

 Nd:KGW の励起が不均一っぽいので、リアミラーを限界ギリギリの ROC=75mm
までキツくして試すのは有力案だ。しかしミラーは高価な一方、それで共振してくれる可能性はそう高くない。
 このタイプの遺物に更なる時間とカネを投入するよりも、予定通りファイバーレーザーに移行すべきと判断。

ここに、旧計画の終了を宣言します。

 レーザー開発計画は完全に失敗しました。今後は、ファイバーレーザーしか扱いません。カネも時間もファイバーレーザーに集中させます。共振しないという問題を、根本的に解決しちゃいます。
 パーツを調達するための調査がかなり大変であること、入手可能パーツだけから最適設計を考えねばならないこと、そして何よりも軍資金を稼がねばならないこと。それらの理由により、このまま即座にファイバーレーザーを進めるのは無理です。

 できれば今年中にはスタートさせたいと考えてはいるものの、いったんコイルガンに戻ります。

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2010年4月26日(月) 21:25

謎の点滅

 リアミラーを微調整シフトさせ、出てくる光の変化を見る。中央のでかい光点が楕円形に見えて、調整に従って円形に近付くのが何とか分かる。
 もちろんそんな変化は僅かなので、正確な調整は困難。しかし、周囲の回折格子は明るさが大きく変化する。ちょっとズレると一気に暗くなり、かなり有効だ。

 上部2カ所の調整ネジをいじくって、最大左右位置を見つける。

 真下突出ネジも駆使して上下を探ると、回折格子が消えた。再度復活させるまで苦労しまくった。

 結果としては最初の調整位置でほぼベストだった模様。
 回折格子を消すには1ミリの数分の1も動かせば十分であり、皮算用通り2ミリラジアン程度の調整精度は出ていると思われる。

 本日の調整を開始した当初より、非常に気になる現象が発生している。これはレンズに
1064nm 選択透過フィルターを着け、ビデオカメラの液晶画面を撮影したもの。
 撮影は手持ちなのでブレまくっているが、ビデオカメラの方は三脚に固定してあって全く動かない。レーザー装置の方も衝撃や振動を与えていない。増幅器は作動させていないため、水冷システムの微振動もない。

 それなのに、回折格子の明るさが高速で変化するのだ。←は動画になってます。

 リアミラーは調整完了していて、しっかり押し付け固定してある。出力ミアーもしっかりとミラーマウントに固定されている。VECTOR
1064 はQCWではなくCW発振だ。
 それなのに回折格子の明るさが安定する瞬間無し。変化もランダムっぽい。それでもランダムながらも最も目立つ位置を探るのは可能だ。

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