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2013年04月の記事

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2013年4月30日(火) 21:56

最初の5ミリ

 当初予定通りにコイルを作ると、4段目あたりまでの放電シーケンスに無理が生じる。そこでコイル長を4段目まで5ミリとし、5〜11段は10ミリという想定で先日のシミュレーションをやり直してみた。

 これならば、許容範囲である。有力案。しかし、5段目と6段目の重複が僅かしかない。そこで更に、5段目まで5ミリというパターンを確認する。

 これならば、ほぼ問題ない。だが、こうなると完全に未知のコイル長パターンになる。4段式コイルガンを搭載した時のストームタイガーでは、コイル長が5+10+16+更に長い、だったはず。あのコイルガン・ストームタイガーは車体下部と放電回路と車体上部筐体は保存してあるが、コイルガン本体と自動装填装置のユニットが引っ越しのドサクサで行方不明。コイルの現物を確認できなくなっていて、いま非常に痛い。

 試作2号機でIGBTがターンオフを生き延びると判明したら、コイルガン・ストームタイガーも修理したかった。だが最重要ユニットが行方不明なので「修理」はできない。作り直しになる。あれはあれで不満点も多いから作り直しもアリだが、そのまま改良しても命中精度は改善できない。命中精度を向上させる今回の案はコイルが太くなるため、そのまま置換できない。
 つまり、命中精度が低いまま作り直すか、スケールモデルを諦めるかの二者択一となる。

 命中精度が低いラジコン戦車・・・はすぐ飽きるだろう。スケールモデルを諦めて強力なコイルガンを積むのであれば、同じぐらいの全長で遥かに性能を出しやすい普通のハンドコイルガン作った方が楽しめる。かくして過去の栄光は更なる眠りに就くのであった。
 で、そのストームタイガーの放電シーケンスに関しては、PICのプログラムが残っているので今でも分かる。

 n段のターンオフより前にn+1段をターンオンしておかねばならないという順送り回生型の制約から、0.1ミリ秒ずつ重複させている。これ、重複量を増やすと初速が低下したので、可能なら重複無しにした方が更に威力が上がった可能性を否定できない。
 言い換えれば、コイルが長過ぎた。あるいはコンデンサー容量が小さ過ぎた。そういう可能性が高い。
 やはり今回は、コイルを短くして最適化を調べ直すべきだ。初段の5ミリしかないコイルが、非常に重要な第一歩となる。

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2013年4月29日(月) 18:56

初段コイル

 コイルを巻くには、両端の壁が必要になる。

 片側はチャンバーパーツと軟鉄シールドを取り付けてあるが、もう片側を押さえるものが必要となる。アクリルパイプの外径が16ミリもあるので、手持ちの適切な壁役が無い。
 そこで、厚さ15ミリの木材に16ミリの穴を開けた。綺麗に垂直に切るのは、絶望的。用途からすると全く問題ではないが、この手の工作を高精度に行なうのは無理。工作精度に頼った設計は、ボツだ。

 初段コイルは幅5ミリなので、5ミリの隙間を作るスペーサーとしてアルミ角材を切り出す。

 コイルを巻きたい位置にセットし、動かないよう背面を小型クランプで固定。

 ここからスペーサーを外し、5ミリ幅を確保。

 いつもながら工作精度は最悪だが、それでも命中精度を出せるような設計こそが理想。こんな工作力で、どれだけの性能を出せるか?それが注目点だ。CADとNC工作機械で素晴らしい性能を出したって、見てる方は道具のおかげにしてしまいかねない。

 従来は、初段コイルは0.35ミリのエナメル線を10メートル巻くという仕様だった。ちなみにこの0.35ミリというのは秋葉原では容易に入手できず、東急ハンズが頼り。
 そこで今回は、0.4ミリを使う。

 問題は長さで、従来はインナーバレル無しの内径11.5ミリで製作した。今回のコイルは内径16ミリと大きいため、同じ長さを巻いたのでは全くの別物になる。
 それに、500グラムまとめ買いだったので、どれだけの長さを巻いたかが分からない。
 仮に、160回巻くことにした。

 実測すると、インダクタンスが700μHにもなった。パチンコ玉を初期位置にセットすると、815μHだ。直流抵抗は1.7Ω程度。いずれも想定より大き過ぎる。電流が充分大きくならないうちに、パチンコ玉がコイルの中心に移動してしまうだろう。こんなコイルだと確かに、2段目と同時ターンオンしなきゃ性能を出せないかもしれない。

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2013年4月28日(日) 16:57

偏芯コイルの作り方

 コイルガンなんて作りまくられてやり尽くされているかと思いきや、たっぷりフロンティアが残っている。回生型の多段式は製作が極端に煩雑なため未だ製作例が少ないし、威力ではなく命中精度に主眼を置いた研究は皆無に近い。そのため、ネタも成否不明のアイデアも一杯ある。だから道は長いが、それだけ楽しめる。

 そして机上の理屈を現実の物体として実体化させるのは、大変である。基本アイデアは簡単に思いつくことが可能でも、具体的な実現方法が分からない。それがモノ作りの常だ。

 これが一番最初に頭に浮かんだ、本番用偏芯コイルの製作案である。
 インナーバレルの上部に角棒を接着しておき、そこに単純にエナメル線を巻きまくる。内径の精度が高い円筒を用意すれば、剛性も精度も容易に達成可能となる。

 ところが、いざ高精度のパイプを調達しようとして、それが容易ならざる難題であることを発見した。

 クロムメッキされた鋼よりも硬く、磁力と干渉しない素材。それですぐ思い浮かんだのはレーザー方面で散々お世話になっている石英だ。ヒーター用の石英管は精度が酷過ぎるが、高精度の石英ガラス管を特注すれば解決!と考えた。しかし、外径ではなく内径の精度が高いガラス管は製造困難なようだ。内径1センチを超えるパイプで内径の精度を出すには、内部に冶具を突っ込んで加熱するなど特殊な製法を要する。
 そうなると、どうせなら自分で金属棒を突っ込んでバーナーで変形させれば?とも思ったが、それでシロウトがヒビや想定外の変形も発生させず精度を出すのは無理だろう。いや、重力変形があるのでプロでも長さ50センチでは無理。

 ”高精度の内径を有する石英パイプが入手可能ならば”命中精度の高いコイルガンを製造できるとしても、前提条件が極端に困難であれば机上の空論にしかならない。可能であっても価格が数万円〜それ以上とかだったら、大して意味はない。現実世界への実体化には「経済性」も避けて通れない。

 あと気になるのは、効率。
 プロジェクタイルとコイルの距離が離れるほど、加速力は低下する。偏芯磁場を作るためにはコイルの一部を離さねばならないが、それは命中精度の実現に不可欠だから加速力が低下しても止むを得ない。だがインナーバレルの存在は、偏芯磁場を作るために必須というものではない。パイプを入れることでコイルとの間合いが開くのは、製作上の都合でしかない。

 そこで、こんな手法を考えられる。
 パチンコ球より少しだけ太い棒を冶具として用いる。棒の上部に太さ2ミリぐらいの棒を2本並べ、全体にエナメル線を巻く。エナメル線はアラルダイトなどで固める。要は、これまで作ったコイルガンの製法を踏襲し、パチンコ球が吸着する天井にガイド用として棒を並べた構造である。

 パイプの内径に比べ、円柱棒の外径は遥かに高精度品を入手し易い。これにより、パチンコ球が転がる部分の精度を容易に高められるし、パチンコ球とコイルの間合いも接近させておける。
 問題は、天井に張り付いたパチンコ球が左右に移動できないこと。

 左右の移動が抑止されるのは、一見するとメリットである。だが、吸着力が左右偏りあっても左右に移動できないということは、左右2箇所の接触点の摩擦力が異なってしまうという結果を招く。かくしてバックスピンに横回転が混入してしまい、遠射では変化球になってしまうだろう。
 インナーパイプを円周の12分の1とかだけ縦切りにして、パイプ2本の代わりに設置するという対案はある。だがそれでは、精度はパイプの内径に制約されてしまい全く改善されない。剛性は低下するしそもそもそんな切り出し加工は至難である。コイルが近くなるパワー面のメリットだけはあるが、筋が悪い。

 11段式までの段階で実験しておかねばならない事項が、どんどん追加される。
 上記2案それぞれ製作して、実験してみるしかない。

1)石英インナーバレル方式
 入手性は良いが精度は期待できない石英パイプをインナーバレルとして使用。
 パチンコ球の加速性能は、許容可能か?
 命中精度は、どれぐらい期待できるか?

2)パイプ2本並べる方式
 製作がかなり面倒臭いのは確実。現実に製作可能か?
 遠距離でのパチンコ球の挙動は?

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2013年4月27日(土) 19:01

間違いだった可能性の過去

 今回の構想では、第1段コイルの長さが5ミリ、2段目以降すべて10ミリと考えている。

 試作2号機は、1+10=11段式コイルガンで、加速区間約10センチとする。ローサイド11箇所、ハイサイド2箇所、合計13箇所のスイッチング素子を要する。

 ここで、大雑把な近似シミュレーションやってみる。
 パチンコ球の加速度はかなり変化するが、とにかく最初の試算ということで、加速区間全体に渡って2000G一定とする。正確には2000Gではなく、毎秒2万メートル/秒にしたが。

 これでパチンコ球が各コイルの中心に達する0.1ミリ秒前にIGBTをターンオンし、0.3ミリ秒持続後にターンオフする。11段それぞれの放電IGBTのスイッチング状態を図に一覧させたものがこれ。

 11段目の加速が終了するまで、3ミリ秒余りとなる。あくまでIGBTの状態であり、ターンオフ後も暫くはコイル電流の回生が持続しコイルに電流は存在し続ける。
 1段目は明白におかしい。0.2ミリ秒後にターンオンする計算になるが、これでは最初の0.2ミリ秒間はコイルに通電されていないのでパチンコ球は初期位置から移動しない。計算とは無関係に、1段目は最初からターンオンせねばならない。こういうのが大雑把なるがゆえの限界であり、このまま本番に適用できないのは、はっきりしている。だが、それでも傾向は見て取れる。
 最初の4段ぐらいは、各段のON期間が重複しない。実はこの方が想定外。回生するためには、回生先コンデンサーの容量に空きが無くてはならない。よって、第n段のIGBTをターンオフするより前に、第n+1段のIGBTはターンオンしていないと困る。後半はその条件を満たすが、最初の方は満たしていない。

 もともと第1段と2段に関しては、コンデンサーを共有するため問題ない。だが、2段目のターンオフは3段目のターンオンを待ってから行わねばならない。
 4段あたりまでは特別な配慮を要するが、これまでに製作したコイルガンは最大で4段という有様。つまり、今回は完全な未知の領域となる。過去の成果がそのままでは応用できない。だが、それだからこそ面白い。何が起こるか予想できない実験なればこそ、やってみたくなる。

 過去の実験では、2段式でも4段式でも、複数コイル同時通電で充分に性能が出ていた。しかし、4段目以内の初期加速においては、複数コイル同時通電ではない方が高性能になる可能性がある。順送り回生型の制約から、同時通電コイルが1つだけという放電パターンは実験しなかった。
 やる前は、段数が増えると銃口付近が例外的になるのではと危惧していた。だが実際は、最初の方だけ例外的処理を行わねばならない・・・のかもしれない。

 かくして第2号コイルガンの建造計画を一部修正。
 1段目と2段目だけ先行してコイルを作成し、ローサイド2箇所+ハイサイド2箇所のフルスペック回生回路を組む。そして、複数コイル同時通電を行わないパターンも含めて放電パターンを変えた実験を行い、初期加速近辺のベストを改めて探る。
 昔のパターンを踏襲する場合でも、コイル内径が大きくなっているからどっちみち再実験は必要だ。

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2013年4月26日(金) 21:18

シンクロトロン型

 さて、コイルのスペックはどうすればよいだろうか?
 これは実際に製作してみるしかないのだが、以前のコイルガン製作時に最低限の結論は出ている。11〜22ジュール程度の投入の場合、コイル長16ミリなら太さ0.6ミリのエナメル線が最適なようだ。今回は41μFの6並列で、13ジュール強を考えている。コイル長10ミリだったら、どうなるか?

 ひとまず0.6ミリを使う前提で考えると、想定される直流抵抗は0.4〜0.7Ω。巻き数によって抵抗値とインダクタンスが変化する。両者の関係はコイル内径の影響を大きく受けるため、本番仕様と異なるアクリルパイプ仕様の試作コイルガンでは詰め切れない。
 概略として、100μHの0.6Ωでシミュレートしてみたのが、これ。フライホイールダイオード付きで、回生無し。

 330Vからの放電は0.4ミリ秒以内に終了し、ピーク電流は300A弱。
 ピーク電流は、コイルの直流抵抗の影響が大きい。0.45Ωになると、120μHでようやく300A以内になる。
 直流抵抗が大きいほどコイル電流を高速に停止させられるが、ジュール熱によるロスは増える。コイルガンとして考えた場合、過ぎたるは及ばざるがごとし、で適正な仕様が存在する。自分が作る規模のコイルでは、それが0.6ミリ線ぐらいというわけだ。 

 いずれにしろ、シミュレーションからはIGBTのON期間を0.3ミリ秒付近にするのが適切だろうと推測できる。
 今回のコイルガンでは、「標準」を決定して可能な限りすべてそれに揃えるのが重要ポイントだ。なぜなら、段数が極端に多いから。

 多段式コイルガンの作例を見ると、1段ずつ順番に最適な放電シーケンスを試行錯誤していることが多い。自分も過去の製作では、同様だった。だが、試作でも10段以上。本番恐らく40段以上。そんな超多段式コイルガンの最適な放電シーケンスを、1段ずつ順番に試行錯誤するのは非現実的である。本番では投入エネルギーを500〜600ジュールと考えており、1回の試射だけでもそれだけのエネルギーを消費する。もちろん時間も。
 よって、揃えられるパラメーターはすべて揃えてしまい、試行回数を減らせるよう考えねばならない。ハード工作は大変だが、下手な戦略を採ると制御ソフトこそ永久に完成しなくなる。揃えられるパラメーターの1つがIGBTのON期間であり、コイルの仕様を全部同一にしたうえでON期間も同一に決めてしまう。これは最適ではない可能性があるが、そんなこと言い出したらコイルガンSは失敗するだろう。

 ON期間を一定にしたうえで、ONにするタイミングだけを各段でズラす。
 だが、コイルガンで重要なのは通電タイミングではない。コイルの電流がゼロになるタイミングである。パチンコ球(の中心)がコイルの中央に達した後までコイルに電流が残っていると、引き戻す力が働いて減速してしまう。
 通電から0.3ミリ秒後にターンオフしたとして、どれぐらいの時間でコイル電流がゼロになるか?
 これは回生先コンデンサーの電圧が高いほど短時間でゼロになる。もちろ放電元コンデンサーの残電圧も関係する。だから一定ではないが、大抵は0.1ミリ秒のオーダーになる。

 これもベストではないにしろ、パラメーターを統一してしまおう。
 すなわち、パチンコ球がコイル中央に達する0.1ミリ秒前にターンオフする、と決めるのだ。ターンオンは、その0.3ミリ秒前となる。
 調整時はこの0.1ミリ秒とか0.3ミリ秒という時間を変化させ、全コイル揃って変化させる。

 さて、ここからがシンクロトロン型の核心になる。
 放電シーケンスを決めるには、パチンコ球がいつコイル中央に達するかを知らねばならない。通常の多段式コイルガンでは、光学センサーなどでプロジェクタイルの位置を検出している。だが、自分の作るコイルガンはコイルが隙間無く配置され、センサーを設置する余地などない。そもそも最初から、そんなもの設置する気がない。
 プロジェクタイルの位置に合わせて放電するのではなく、放電に合わせてプロジェクタイルを動かすのだ。

 これまで何度か説明しているが、最高の初速が得られる放電シーケンスより僅かにスローテンポで放電する。
 すると、たまたま加速が悪かったプロジェクタイルは、放電シーケンスが噛み合って加速が良くなる。たまたま加速が良かったプロジェクタイルは、ベストな放電シーケンスからより外れることなって加速が悪くなる。
 こうして勝手にフィードバックが掛かり、放電シーケンスに合わせてパチンコ球が加速される。
 わざとスローテンポにした放電シーケンス以上に、たまたま加速が悪くなると、フィードバックが利かずに一気に失速する。だから、バラツキが大きいほどスローテンポにしなければならず、初速が落ちる。ここでパチンコ球という、極度に公差の小さな高精度工業製品をプロジェクタイルに使う意味がある。また、初期位置は厳密に管理せねばならない。

 順番に通電される超多段式の磁場に、パチンコ球が波乗りするイメージである。

 少しばかりの初速低下・威力低下と引き換えに、初速の安定という効果が得られる。これはコイルガンSの第一目的「遠射の命中精度」に適合する。

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