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2019年02月の記事

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2019年2月28日(木) 21:35

インダクタンス

 コイルガンのシミュレーションは厄介だが、いざ吸引力がシミュレートできるようになった段階で、想像よりも更に厄介であることに気付いた。

 まず、磁束飽和。磁束飽和があるため、複数のコイルから受ける吸引力は個々のコイルから受ける吸引力の和にならない。磁束が重複することで飽和し易くなり、吸引力は個々の和より小さくなる可能性がある。そしてその具体値は、単純計算ではなくシミュレーションせねば分からない。
 コイルが1つなら良いが、回生型では複数のコイルを密着実装させる。そのため、鉄球は複数のコイルから無視できない力を受ける。コイルと鉄球の相対位置を変化させつつシミュレートしモデル化を行ったとしても、それでコイルガンのシミュレーターを作れるかと言えば否なのだ。

 いきなり回生型を丸ごとシミュレートしようというのは、無謀だ。まずは単段式のシミュレーションを目標にすべきだろう。
 単段式における最適コイルが設計可能になれば、それを合体させて多段式にしても良いだろう。それでは確かに磁束飽和の影響で最適な単段式コイルガンにはならないかもしれないが、漫然と勘で個々のコイルを設計するよりはベターなものになる可能性は高い。
 また、センサーで通電タイミングを測る通常の多段式であれば、複数コイルの同時吸引は無視できるほど小さく、個別コイルの最適設計さえ出来ればOKだと思われる。

 単段式と言っても、多段式の2段目以降を1つ取り出したコイルも想定する。すなわち、鉄球の初期速度はゼロと限らない。
 それはともかく、もう1つの重要パラメータがインダクタンスだ。インダクタンスは実測可能だが、実測するためにはコイルの実物が必要になる。机上で「有望そうなコイル」を設計しただけでは、インダクタンスは分からない。だが、コイルの試作は非常に面倒臭い。常に実物が必要だと、設計効率が非常に悪くなる。時間もそうだし、コスト的に不利なのも言うまでもない。
 要するに、コイルの吸引力がシミュレートできるようになったのだから、コイルのインダクタンスもシミュレート可能な無料ソフトは無いのか?という話。

 空芯コイルのインダクタンスを求める方法は簡単に見つかるが、欲しいのは内部に鉄球が入り込んだ状態でのインダクタンスである。鉄球が存在するとインダクタンスは何割も変化し、それはコンデンサーから通電した際の電流変化に大きな影響を与える。
 空芯コイルのインダクタンスが分かっても、それでシミュレーターは作れない。

 無理なら当初予定通り、実物コイルを製作し実測するしかない。そう思っていたのだが、どうやらそれでは済まされないことが判明した。
 空芯コイルのインダクタンスを計算する場合、比透磁率という概念が入って来る。これは空気の透磁率を1とした場合の相対的な透磁率のことで、空芯コイルでは1として計算する。だから、みんな特に気を払っていない。しかし鉄球が入り込んだ場合、透磁率は無視できない。これが鉄芯なら鉄の透磁率を使えば良いが、鉄球の場合は計算式では無視で恐らくシミュレーションが必要になる。
 だが、問題はその手前に存在した。

 そもそも、軟鉄の透磁率とは、どれぐらいなのか?
 実は、これが可変だったのだ。磁界が大きくなると、軟鉄の透磁率は大きくなる。そしてある程度まで来ると、今度は逆に小さくなる。変動範囲は120〜450ぐらいで、ノンリニア。
 つまり、小電流で吸引力を実測しても大電流での吸引力を単純計算できないのと同様、通電しないコイルでインダクタンスを実測しても通電時のインダクタンスとは異なっており、しかも単純計算することもできないのだった!

 止むを得ず軟鉄の比透磁率変化曲線を適当な式で近似したとしても、鉄芯コイルのインダクタンスを計算できるだけである。鉄球それも位置任意、という物体が入り込んだコイルのインダクタンスを計算できる訳ではない。実測しても、換算できない。
 吸引力同様で、インダクタンスを計算可能なシミュレーターが必要だ。そんな無料ソフトは、存在するのだろうか?

written by higashino [コイルガン設計] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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2019年2月27日(水) 21:26

コイル実装

 簡易試験に合格したコイルを、いよいよ銃に実装する。
 マガジンと垂直になるよう取り付けたいので、若干斜めになる。

 金具の方を更に削り、鉄棒の突出位置を2ミリほど低くできるようにする。

 6ミリボルトで固定し、オートウエルドで固める。

 固化が進むまで、ひたすら放置。

 尾部のスプリングに、鉄棒を接着。

 こっちはアラルダイトを使用し、固化まで固定しておく。

 鉄棒をコイルに通し、尾部をオートウエルドで固める。

written by higashino [ラジコン用エアガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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2019年2月26日(火) 22:08

磁束飽和

 どうやら期待通りの結果が得られそうなので、モデルコイルの電流を増やして比較してみる。
 ADVENTURE_Magnetic_on_Windows はあくまで無料の簡易ソフトなので、巻き線を定義したり銅線に流す電流の値を直接指定することはできない。コイルを1つの円環として扱い、断面積あたりの電流値を定義できるだけだ。
 だから、以下では分かり易くアンペア換算しているものの、経験に基づくそれらしい設定でしかなく厳密ではない。

 とはいえ、経験や従来の推定に非常に近い値が得られている。

アンペア 推力グラム 推力倍率 磁束飽和
1 0.247 1 100
2 0.988 4 100
10 24.7 100 100
100 2461 9966 99.7
200 8488 34378 85.9
300 12750 51636 57.4
400 16033 64935 40.6
500 18561 75173 30.1
1000 17705 71705 7.2

 推力倍率は、1アンペア通電時の何倍の推力が得られるかというもの。磁束飽和が無ければ、基本的に電流の2乗に比例した推力が発生する。
 磁束飽和の数字は、磁束飽和が無い場合の理想的な推力値に対し、実際に発生する推力が何%であるかを示す。理想状況なら、100となる。

 推力は、パチンコ玉の前部と後部の「磁束密度の差」により発生する。そして、推力が発生する状況とは、前部の磁束密度が後部より大きくなっている。ここで電流を増やして磁束密度を大きくして行くと、前部が先に磁束飽和を起こす。しかし後部の磁束飽和は遅れ、結果的に「磁束密度の差」が小さくなる。
 1000A通電が500A通電より推力低下しているのは、これが理由であると考えられる。

 なお、物は試しと1万アンペア通電したら、無茶苦茶なマイナス値になった。たぶん B-H 曲線設定ファイルの範囲外になってしまったのだろう。実際は、後部も磁束飽和して推力がゼロに近付いてしまうだろう。
 計算結果は磁束飽和の恐ろしさを存分に示している。こりゃどこの軍隊だって、レールガンを研究してもコイルガンは研究しないわけだ。ただし、武器としては論外という性質は、オモチャとしては逆に利点となる。

 ともあれ、コイルガンで扱う領域の電流においては、非常にそれっぽい結果が出ている。驚くほど、これまでの経験や推定と一致している。
 ここまで有用だと、インダクタンスの計算ができないのは残念。コイルを巻き線として扱えなければ、インダクタンスを出しようがない。やはりそっちは、実測するしかない。ただ、パチンコ玉の位置変化によるインダクタンスの変化は結構単純であり、近似的な汎用モデルを作っても充分にシミュレーションが実用になる雰囲気がある。

 コイルガンに流すのは200Aあたりまでが無難で、それを超えると急激に効率が落ちる。現状では300A以上流れることもある・・・とされているがそれはパチンコ玉が存在せずインダクタンスが小さい状態の素の空芯コイルでLC共振シミュレーションやった結果である。
 実際のコイルガンでは、200Aをそれほど大きく超える部分は少ないだろう。それでも、電流値を増やしてパワーを上げるというアプローチでは大した効果が得られないという想像はできる。

 もちろん吸引力の絶対値にはまだ伸びる余地があるので、効率低下を承知のうえの力ずくパワーアップ自体は尚も有効と考えられる。効果は小さいが、ゼロではない。

 多段式がパワーアップに有効なのも明白だが、コイルガンの全長に制約を与える場合、悩ましいものがある。プロジェクタイルの速度が上がると、コイル通過時間も短くなる。コイル通電時間を短くせねばならなくなる。Lを減らせば電流が増えるし、Cを減らせばパワーダウンする。
 全長を伸ばせば、制約がモロにキツい。ストームタイガーなどは、所定の全長以内で、いかに性能を上げるかという挑戦なわけだ。

written by higashino [コイルガン設計] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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2019年2月25日(月) 21:31

推力を得る

 磁力の結果表示では、グラフのタイトルが Nodal force となっている。だが、磁力を英訳すると Magnetic force であって、Nodal force ではない。
 Nodal とは、「節」らしい。どうやら、節点に働く力を表示させているのが、Nodal force である。空間を四面体に分割して計算すれば、その頂点というか節点ごとに結果が得られる。素直に解釈すれば、その節点に働く力を表示させていると考えられる。

 ADVENTURE_Magnetic_on_Windows ではMKS単位系が使用されているのは明白だ。そして、MKS単位系において「力」とはニュートンである。
 つまり、球体表面および内部に存在する節点の値(Z成分)を加算すれば、球体全体が受ける力をニュートン単位で取得できると思われる。

 この仮説の裏を取るため、別方向から検証してみる。
 同じくMKS単位系において、磁束密度はテスラだ。1万ガウスだ。仮設通りであれば、磁束密度の結果表示の方では、グラフがテスラ単位のはずだ。最大値が0.01348であり、これがテスラ単位なら135ガウスぐらいになる。
 シミュレーションはコイルに1A通電した按配で与件設定したので、最大135ガウスというのは充分に想定内である。非常に適切なオーダーだと言わざるをえない。

 次に、Nodal force が「絶対」と「圧力」のいずれに属する量であるかを調べてみよう。
 絶対量であれば、単純に加算すれば良い。圧力ならば、面積を考慮する必要が生じる。
 調査方法は、節点密度を減らして再計算するだけ。これで、球体に含まれる節点の個数を減らす。Nodal force が絶対量ならば、同一の推力が少ない節点に分配される結果として、数値が顕著に大きくなるだろう。いっぽう圧力ならば、数値はそれほど変化しないだろう。

 結果は、期待通りに数値が大きくなった。

 球体の分割密度を10倍から3倍に低下させたところ、グラフの範囲は最大値 7.847e-05 になった。10倍のときは、最大値 2.089e-05 だった。最小値も同様に、絶対値が大きくなっている。
 これは、確定と判断して良いだろう。

 Nodal force の数値は、節点に働く力(ニュートン)である。
 球体の表面および内部に含まれる節点の Nodal force のZ軸成分を加算すれば、パチンコ玉全体として受ける力がニュートン単位で得られる。
 最も単純で、紛れにくい方法が使える。

 ParaView はVTK形式のテキストファイルを読み込んで、それをグラフィック表示しているだけである。よって、元のテキストファイルを読めば必要な情報は得られる。
 つまり、やるべきことは、VTK形式の仕様を調べること。

 これは、思ったより簡単だった。最初のブロックに磁力値が並び、次のプロックに座標が並ぶ。個数は3行目に Piece NumberOfPoints= で出力されている。

 ここに至り、鉄球の中心を原点固定にしたことが役に立って来た。初期配置を変化させてもパチンコ玉が原点固定ということは、含有計算は簡単になるし常に同じ座標だけ確認すれば良い。ADVENTURE_Magnetic_on_Windows のご機嫌取りとは無関係に、鉄球座標は原点中心固定すべきである。

球体10倍密度 球体3倍密度
節点総数 44413 33936
球体内節点 9820 1065
推力グラム 0.247 0.239

 推力は、1キログラム=9.8ニュートンで換算した値である。球体の節点密度を変えたことで球体内節点は10倍ぐらいの差があるが、Z軸方向の節点力を加算した値は小さな差しかない。仮説が、更に確からしくなった。
 この推力は1A通電のオーダーなので、「2A流しても1グラムていどしか推力発生してないんじゃね?」という実験結果とも合致する。

 どうやら、最初の目的は達成されたようだ。

written by higashino [コイルガン設計] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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2019年2月24日(日) 20:57

結果表示

 ParaView の使い方は、これも ADVENTURE_Magnetic_on_Windows のマニュアルに書かれている。それを元にあれこれいじれば、容易に要領は分かるだろう。新しい表示項目を作成したら、Apply ボタンを押し忘れないように。

 磁束をベクトル表示させてみた。

 ADVENTURE_Magnetic_on_Windows の数多い弱点の1つが、物体を個別に扱えないこと。結果出力を行った段階で、コイルがどれで鉄球がどれで、という情報は失われている。だから、これで磁束を見ることはできても、コイルがどの範囲で鉄球がどの範囲なのかは分からない。

 続いて、磁束密度を表示させてみた。

 分割空間をワイヤーフレーム表示させてやると、コイルと鉄球の範囲が分かる。
 境界面が、いちおう分かり易い感じに残存してくれている。しかしこれは結果として何とか判別可能というだけであり、ソフトの機能ではない。

 これは似ているが、微妙に異なる表示になっている。

 磁束密度を、Z成分のみ表示させたものだ。Z軸のプラスが銃口側になるよう物体配置しているので、これが鉄球に対する吸引力を決定付ける。

 鉄球の銃口(Z軸+)側と砲尾(Z軸−)側の磁束密度の「差」が、吸引力を発生させる。

 そのものズバリ、磁力をZ軸成分のみ表示させてみた。

 鉄球の銃口(Z軸+)側が大きなプラスになっている。砲尾(Z軸−)側は小さなマイナス(砲尾側への引き戻し)になっている。差し引きでは、銃口側への推進力が発生している。

 これが、欲しかったデーターだ。通電したコイルがパチンコ玉に与える推力・・・を遂にシミュレートできた。
 だが、これで終わりではない。このシミュレーション結果からは、鉄球全体として具体的に何キログラムの推力が発生しているのかが分からない。グラフの数字は無次元であり、それをキログラム(別にニュートンでもいいけど)に換算する方法が分からない。

 換算できなければ、コイルガンのシミュレーションに利用できない。

written by higashino [コイルガン設計] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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