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2006年11月28日(火) 18:09

トランジスターよ、お前もか!

 FETにしろIGBTにしろ、ゲートドライブにおいては電荷の充填より引き抜きが問題とされることが多いようだ。
 バイアス抵抗を使用して電流を電圧に変換する場合は特に大問題となることに、遅れ馳せながら気付いた。

 これは1ヶ月前に載せた原理図である。601Aに光が当たらなくなって電流も流れまくなると、IGBTのゲート電荷はQ2により赤矢印のごとく急激に吸い出される。だが、重大な見落としをしていた。
 赤電流のモトとなる緑矢印のベース電流に注目。ここに大きな電流が流れるほど赤い引き抜き電流も増大する。ところが、緑電流が流れればR1に電位差が発生し、R1の+側電位も高くなってしまう。

 大電流で引き抜こうとすれば、R1の+側電位が高くなりIGBTゲート電位との差が小さくなり、流れる電流が減ってしまう。結果として、引き抜き速度が大幅に低下してしまうのだ。
 ゲート電荷を充填する場合は、R1の+側電位が充分に上昇した後はQ1のベース電流が増えれば増えただけ存分に大電流がIGBTのゲートに供給される。しかし、引き抜く場合はQ2のベース電流が増えるとブレーキが掛かってしまう。この原理的問題を解決しないことには、ゲート電荷の引き抜き速度は向上しない。

 しかし、パーツ点数にこだわると解決するのは難しい。フォトトランジスターは光が当たった場合に電流が流れるが、当たらない場合は流れない。その違いがあるため、ONに比べてOFFはどうしても受動的となり性能が落ちる。OFFで能動的な電荷の移動を行いたければ、どうしてもパーツを増やさざるを得ない。
 定石としては、R1の−側をGNDよりも低電位に接続することで、R1を流れる電流により減ってしまう電位差を補う。当然パーツは増える。

 電流ではなく電圧でスイッチングするFETをブースターとして使用することで、立ち上がり立ち下がりを鋭く出来ると期待される。この場合、ブースターFETのゲート電位を下げるとハイサイドがONとなりIGBTゲートはプルアップ。FETゲート電位を上げるとローサイドがONとなりIGBTゲートはプルダウンとなる。
 つまり、+−が逆となる。

 だから、R1の+側をVccよりも高電位に接続するような回路となる。

 2電源化は回路の大型化を招くため、D1を挿入してブースターFET側の電位を下げるのが普通だろう。性能的にはもっと大幅な電位差を発生させたいが、そこは回路規模とのバランスとなる。
 ダイオードが増えるがFET方式ではIGBTゲートに接続する抵抗を省略出来そうなので、結果として全体のパーツは増やさずに済む。

 D1は回復時間など特に高速品で無くて良い。通常なら敬遠される大きな電位差を発生させてしまう品こそ好ましい。
 Q1やQ2もON抵抗が大きなものをわざわざ探した訳で、高性能を実現すべく低性能品を探すってのが面白い。動作確認は1N4007でいいだろう。

 

基本チェック

 FETドライブでは従来とバイアス抵抗R1の位置が変わるため、異なるパーツ構成で波形チェックをやり直さねばならない。さっさと先に進むとロクなことにならないのが身に染みたので、石橋を叩きながら一歩ずる前進しよう。

 完成したPICブレッドボードの表側。
 赤色LEDを電流制限抵抗1本でPIC直接駆動。それをTPS601Aで受ける。受光系は6V前後で動作させたいが取りあえずPIC電源の安定化5Vをそのまま使っている。

 最初は601Aにトランジスターを入れず、R1で直接プルアップする。
 そして、アノードの電位をオシロで測定する。光が当たらず601Aに電流が流れない場合は5Vである。
 光が当たって電流が流れると、R1にも電流が流れ両端に電位差が生じる。そして601Aのアノード電位が下がる。

 写真の黒いプローブがGND、白いプローブは外部トリガーである。
 PICはまず外部トリガー信号を発生させ、10μ秒待ってから幅100μ秒のLED点灯パルスを発生させるようにした。

 これは、PICのLED点灯パルス。
 10μ秒経過してから100μ秒幅である。基本波形だ。

 そしてこれが、R1で直接プルアップされた601Aのアノード電位。完全な上下逆になっていれば理想だが、そううまく行かない。どの程度理想から崩れているか良く分かる。この程度なら実用的には問題無い。しかし、短い距離で直射しているからこその波形でもある。光ファイバーを通すと、増幅無しでは使い物にならない。その増幅が現在問題となっている。

 

増幅してみる

 今度はC2655を使って増幅し、同じ場所を測定する。
 完成したと思った光ゲートドライバーを崩壊させた主犯たるC2655の登場だ。エミッターが設地しているが、それでもいい加減な波形を発生させるのだろうか?
 それとも、発光側にLEDではなくレーザーモジュールを使った時の増幅仕事をしっかり果たしてくれた時のように、まっとうな矩形パターンを描き出してくれるのだろうか?

 とんでもない波形が描き出された!
 まさに犯行シーンの再現である。601A通電時の電位低下はしっかりしているのに、光が消滅した後も延々と電位が戻らない。言うまでもなく全く使い物にならない。なぜだ!?
 C2655以外でも症状は改善しない。どうやらC2655だけでなくトランジスター一般の問題っぽい。

 犯行の動機を推理してみよう。
 以前は、エミッターが変動するのがマズいのでは?と思った。だが、今回は設地している。同じようにエミッターが設地しているにも関わらず、レーザーモジュールを駆動するためにPICに接続した時は綺麗な矩形パターンを描いていた。それが今回601Aに接続した時は、OFFが遅い。ONは遅くない。
 まさかと思うが、トランジスターにもFETやIGBT同様に、ゲート電荷ならぬベース電荷みたいな概念があるのか?そのベース電荷を抜かないとOFFしないのか?そんな馬鹿なことある訳が・・・トランジスターがそれじゃ役立たずだよ。

 パターン発生に使う555や、インバーター制御のMC34063、あるいはPIC16F84・・・それらロジックICには吸い込み能力がある。1を出力すれば電荷の供給能力があるのは誰でもイメージ可能だろう。
 一方、0を出力すると出力ピンがある程度の抵抗値を介してGNDに接続されたような動作をする。つまり、電荷の消費能力がある。ゲートに接続して0を出力すれば、ゲート電荷を吸い出せるのである。

 これに対し、フォトトランジスターには電荷の消費能力が無い。
 光が当たったいわば1のときは同じである。電流が流れるので電荷の供給能力がある。しかし、光が当たらない場合は単に電流が流れないだけであり、電荷を消費することは出来ない。ゲート容量とかベース容量という概念が仮に存在すれば、ロジックICではOFF時に問題無くてもフォトトランジスターでは電荷が抜けずOFFが著しく遅くなるわけだ。

 

仮説の検証

 R2を追加した。この手の作業はブレッドボードの威力が発揮される。
 もしもトランジスターにベース電荷なるものが存在すれば、R2によって電荷を抜くことが可能となりOFFが高速化されるはずである。

 一方、コレクター電流はベース電流に比例するという基本動作だけが事実なら、R2の有無はOFF速度に殆ど影響を与えないはずである。
 ベース電流を供給する601Aは最初に波形をチェックした通り、かなり高速で電流がOFFされる。

 自分的には衝撃だった。R2の抵抗値を小さくするほどQ3のOFFが高速化されたのである!
 このパターンはR2に1KΩを使用した場合のものである。100KΩだと比較により高速化されたと分かる程度の差しかない。実用上はっきり使い物になるOFF速度は1KΩ位食わせないと実現しない。
 トランジスターには、無視出来ない大きさのベース電荷が存在した。ふ・ざ・け・る・な!
 ベース電流が無くなればコレクター電流も即座に(数μ秒なら許す)止まりやがれ!

 FETやIGBTで頭を悩ませるゲート電荷の問題が無いことがトランジスターの取り柄だと思っていたのに・・・トランジスターよ、お前もか!
 R2を大きくすると601Aによるプルダウンが阻害される。早い話が、感度が低下する。せっかく感度アップのためにQ3を追加したのに、スポイルされてしまう。R2に1KΩではQ3の付加が無意味になりそうなほど感度低下する。
 感度を上げればOFFが使い物にならない遅さ。OFFを速くすれば感度が使い物にならない悪さ。さあどうする?

 繰り返すが、この問題はロジックICでは顕在化しない。フォトトランジスターだからこそ大問題となっている。
 光ゲートドライバーの開発は、当初考えたほど甘いものではなかった。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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