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2012年3月9日(金) 20:52

光ファイバーの炎上

 光ファイバーの曲げ半径は、実装を大きく制約する厄介事なのでつい軽視してしまいがちだ。しかしレーザー戦車が頓挫中なのも、曲げ半径の罠にハマったせいである。今後固体レーザーを扱う上で光ファイバーは避けて通れない。曲げ半径がいかに重要なパラメータであるかを肝に銘じておかねばなるまい。

 さて増幅キャビティーを掘ると、光ファイバーが全面的に炭化している。被害甚大だ。
 これでは、ファイバーを解いて総延長を確認することさえ無理。ファイバーレーザーの設計において、適切なファイバー長は良い資料がなく、自作する場合の障害になっている。

 特に燃え方が激しいのは、17個の励起LD出力を1本に合流させる部分。ビームコンバイナーは、ただでさえ発熱が大きい。過大入力では真っ先に燃えてもおかしくない。放熱面でも、優遇された設置になっている。
 ビームコンバイナーは融着接続機で製作できないので、完全に仕様不能なのは大ダメージだ。
 100ワットでも復活できないかという望みは、絶たれようとしている。

 それにしても恐らく2割ぐらいの過大入力だったはずで、それでここまで酷く破壊されるというのはゾッとする。理論的には理想のレーザー発振器であるファイバーレーザーだが、工学的には伸び盛り&ノウハウ蓄積途上の技術なのだろう。
 一流メーカー品であっても、全面的にガチガチに配慮された設計ではない。こんなもの手探りでパーツから自作始めてたら、何年やろうと共振しなかったYAGレーザーみたいな泥沼に陥っていたのではなかろうか?

 種火ユニットのキャビティーも確認しようとしたら、根元から脱落。楕円形の部分全体が独立したヒートシンクになっていて、熱伝導グリスでくっついていた。燃えさえしなければ、堅牢で信頼性の高いユニットかもしれない。

 大半が無事に見える励起LDを発振させても、種火ユニットからは全く何の光も出て来ない。つまり、こっちのキャビティーもほぼ確実に破損している。
 両方のキャビティーが破損していては、ニコイチも無理。

 光ファイバーが炎上するのは、ふつうイメージし難いと思う。石英は1050度あたりになると急激に透明度が落ちるのだ。ファイバーコアの温度が上昇して限界を超えると、透明度が落ちて発熱し更に温度が上がる。透明度が更に落ちる。こうして一気にコアがブラズマ化して破滅する。
 融着部分は元からロスが発生し発熱源になるから、ウィークポイントである。
 考えてみれば、鏡のように輝くステンレスが簡単に溶けるビームである。それを直径9ミクロンに閉じ込めるのだから、透明度の高い光ファイバーにとっても負担が大きい。普通の使用で数百度に達していても不思議ではない。

 種火キャビティーのダメージは、増幅キャビティーより遙かに少ない。見た目は、殆ど無傷だ。しかし顕微鏡で確認すると、光ファイバーが破断している部分が発見できた。
 更に励起LDを発振させると、それとは別の場所が強烈に輝いた。赤外線にほとんど感度がない通常のデジカメ撮影で、フラッシュ発光してもくっきり写るほどだ。致命的破損箇所か。

 不幸中の幸いとして、こっちのビームコンバイナーは2つとも燃えていない。もしも本当に使用可能であれば、Yb入りのアクティブファイバーを新品購入することで復活できるかもしれない。ファイバーを解いて長さを調べることも、こっちは可能に思える。

 種火キャビティーのダメージが増幅キャビティーより遙かに少ないのは、一応予想していた。
 増幅キャビティーでは、内部の光強度が倍増しているはずだからだ。だとすると、種火ユニットにも独立したOCが付いているはずであり、光ファイバーさえ健在なら単独で100ワットのレーザー発振できていたはず。

written by higashino [ファイバーレーザー] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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