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2014年2月25日(火) 21:03

レーザー銃 中断の経緯

 IPG社は米軍のレーザー兵器開発にも参加しているガチだが、ファイバーレーザー発生装置を高度に並列化することにより、一部が破損しても全体に影響が出ないようにして兵器としての信頼性を確保している。最初から「壊れることがある」のは想定内なのだ。

 もちろん出力を落とせば壊れなくなるわけで、民生用・大衆用で開発されているファイバーレーザー装置はマージンを確保する設計になっている。

 ともあれ装置は回復不能なダメージを受けてしまったので、考えた。
 励起用LDや筐体など流用可能なパーツはそのまま使うが、大部分のパーツは新たに自力で調達。それを組み込んで作り直す。大変な作業ではあるが、完成品をバッテリー動作できるように改造しただけ・・・に比べると遥かに「自作品」に近くなる。その過程で学べることも多いだろう。
 一方で破損の直接原因となった自作電源だが、作り直し。まず励起用LDに類似した特性を持つ「ダミー負荷」を建造。それで試験を繰り返した。定数を変更することにより、DC-DC コンバーターの不安定領域を「レーザー出力の低い部分」にシフトさせた。最大出力近辺で、安定領域を使えるように調整した。

 こうしてパーツを揃え、重要なものではYbドープされたレーザー媒質ファイバーだけが未調達で残った。
 これに限らず、レーザー媒質は極めて高価である。そこで、増税前に買いたい。だが、完成が無理だと分かったら出費したくない。だから完成が可能かどうかの見当を付けるため、いま少しレーザー銃の製作作業を前進させたい。
 それが、現状だ。

 これまで製作が止まっていたのは、発熱対策が解決していないため。
 ファイバーレーザーは放熱が容易とされているが、限界はある。そして、限界が高ければそれだけ出力を上げて使うから、結局のところマージンは増えない。もちろんマージンを大きく取れば安全だが、そもそもIPG社の純正品からしてそうなっていない。IPG社は有名メーカーだが、マージンなんぞ削って出力を上げ、壊れても部分的影響に留まる並列設計で乗り切るというポリシーである。
 多数を並列して運用するならそれでいいが、自分の場合はコレ1個しかない。コレが壊れたら、それっきりだ。かと言って、自作品なのに市販品よりパワーが落ちるのも我慢し難い。

 発熱で問題となるのは、光ファイバーの融着接続を行う部分である。どんなに優秀に融着させたとしても、ロスがゼロということは、あり得ない。ロスすなわち発熱であるから、光ファイバーの熱ストレスでは融着部分が最も危険である。
 融着ロスだけではない。融着には被覆を除去せねばならないが、どんな被覆よりも空気の方が熱伝導は悪い。この点でも、融着部分は発熱が大きくなる。だから、少しでも熱を逃がすため、熱伝導の良い物質で融着点を覆いたい。ところが、これが意外な難題となった。

 パソコンCPUのように、とにかく熱伝導の良いグリスを塗れば良い、というものではない。
 光ファイバーは、屈折率の差により光を閉じ込める。不用意に屈折率の大きな物質を塗ると、光が漏洩してしまう。普通の光ファイバーであれば、コアとクラッドの屈折率の差により、光はコアに閉じ込められる。クラッドの外側の物質は、関与しないから屈折率が高くても問題ない。だが、ファイバーレーザーの場合、レーザー媒質ファイバーではクラッドに励起光を通すのだ。コアより遥かに断面積の大きなクラッドを活用することにより、桁違いの励起光を叩き込むことが可能となり、ファイバーレーザーは一気に大出力化した。しかし一方で、クラッドの外側に存在する物質の影響が出てしまう。

 励起LD光を通す光ファイバーの構造。赤く塗ったのがコア部分で、直径100ミクロン。ここに励起LD光を閉じ込める。青く塗ったクラッド部分は屈折率が少し小さくなっており、励起LD光を全反射させる。クラッド部分には光が通らないため、その外側の屈折率は影響しない。全体の直径は、125ミクロン。

 レーザー媒質ファイバーの構造。緑に塗ったのがコア部分で、直径10ミクロン。Ybがドープされており、励起LD光を吸収して励起される。赤く塗ったクラッド部分に、励起LD光を通す。全体の直径は、125ミクロン。
 クラッド部分の外側に屈折率の大きな物質が接触すると、励起LD光が漏洩する。融着しない部分では、低屈折率の被覆に覆われているので問題ない。

 光を漏洩させないためには、屈折率の小さな物質を接触させねばならない。大抵の物質は空気より熱伝導が良いので、焦点は屈折率の方である。
 困ったことに、容易に入手可能な接着剤や充填剤は全滅なのだ。すべて例外なく、使い物にならないほど屈折率が大きい。下手に使ったら励起LD光がクラッドより漏洩し、放熱どころか瞬時に燃えてしまうだろう。
 世の中には低屈折率の充填剤が存在するが、これがとにかく個人入手困難。訳分からないほど困難で、どうしようもなくて入手中断。放熱対策の目処が立たないため、レーザー銃の製作も中断。

 以上が、現状である。

written by higashino [ファイバーレーザー] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(2)] [TB(0)]

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Comments

『接触させるのは』

液体ではダメなのですか?

written by Na

『液体』

純水その他も考えたものの、やはりメンテが・・・
ゴキブリレーザー等これまで作ったハイパワー発信器はみんな水冷式で、かなりメンテが大変。空冷を経験すると、その圧倒的な取り扱いの楽さが実感できてしまう。
せっかく完全空冷が可能な装置に、液冷を含めたくないんですよね。

written by IDK

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