2010年1月6日(水) 21:39
レーザー装置の正規ユーザーであれば逆にまず拝めないのが、ヘッドの中である。危険を冒して急いで撮ったのがこれ。
東京の冬ならではの湿度の低い日に少し開けて、すぐに閉じた。
目立つ232Cコネクターの上に、同軸ケーブルのコネクターが付いている。内部を見る限りは単なる電源用とかではなく、もっと重要な信号を扱うようだ。本来であれば内部を精査したいが、大量の埃が入り込むと取り返しが付かなくなる可能性があってフタを全開出来ない。
状況証拠から推理すると、内蔵Qスイッチは音響光学素子AOではないか?
QCWなYAGレーザーではAOが一般的なようだし、AOのドライブには同軸ケーブルが使われるものらしい。というのも、超音波を与えるのだが数十キロヘルツではなく数十メガヘルツでありビデオ信号やFM放送の領域なのである。
また、類似品を分解して公開してる外人がいる。いずれもYAG基本波に対するQスイッチであり、スペックが類似の可能性は高い。類似品でQスイッチのドライバーに使われているアンプは三菱のM67743Hで、増幅対象が77〜88MHz。ということは与えるべき周波数は80MHz前後だろう。
このレーザーヘッドにはSHG結晶が内蔵されておらず、励起LDも外部から光ファイバー経由だ。Nd:YVO4
と光学系だけなのになぜか耐熱温度が50度までとなっている。そりゃ高温になれば筐体が膨張して光軸が狂うかもしれないし接着剤の問題もある。しかし50度とはいかにも低い。
これも、AOの耐熱性が低いという事実に符合する。
アナログ放送のRFビデオ出力を接続しても駄目で、ビデオ信号は10ミリワット程度しかない。AOの駆動には1ワット程度を要し、これはそれなりの発熱が伴う。
AOは湿度にも敏感らしいから、フタを開けたのが乾燥した日で良かった。
とにかくQスイッチがAOである臭いぷんぷんだが、その前提で考えると幾つかの予想が立てられる。事実としては、何の信号も電源も与えていない現状においてレーザーヘッドはYAG基本波をCW発振している。
・同軸ケーブルで約80MHzの正弦波出力を1ワット以上で与えれば、レーザー発振が停止するだろう。内部のAOが定常波を屈折させ、光軸が狂うからである。
・同軸の出力を停止した瞬間に一気に共振し、パルスレーザーが発生するだろう。
・基本は信号を与え続け、毎秒3万回の頻度で一瞬だけ信号を停止すれば、その周波数でQCW発信となるに違いない。
FM帯域の正弦波はLC共振回路で簡単に出せそうだが、問題は出力。RFパワーモジュールの助けを借りねば大変そうだが、M67743Hなどどこにも売っていない。これを使えば合法出力の無線機を違法ハイパワー無線機に簡単に改造出来てしまうから、ヤバい品ってことなのかもしれない。
重要なポイントとして、単純に外部RF入力にしてはレーザーヘッド内の回路が複雑過ぎるように見える。232C処理回路には見えない。外人の類似例では非常にシンプルな回路になっている。VECTOR1064内の回路は、コイルの大きさといいトランジスターっぽいチップといい、自前でLC発振を起こしているようにも見える。半固定はバリコンで、発振周波数の微調整が行われたのかもしれない。そして基板の下にRFパワーモジュール?
うまくすると、同軸ケーブルには直流電源を与えるだけでAOが作動してくれるかもしれない。最初に試す価値はある。
written by higashino [パルスレーザー] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
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