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2008年11月26日(水) 17:44

天駈ける工具箱

宇宙空間で行方不明になった工具箱、アマチュア天文学者が地上観察に成功

【Technobahn 2008/11/25 10:23】
 今月18日、国際宇宙ステーション(ISS)で行われた船外活動中に宇宙空間で行方不明となった船外活動用の工具などを納めた道具箱をアマチュア天文学者が地上から観測することに成功していたことが22日、明らかとなった。
 この「画期的」な観測に成功に成功したのはオンタリオ州在住のアマチュア天文学者のケビン・フェトラー(Kevin Fetter)さん。フェトラーさんはISSの軌道要素から失われた工具箱の軌道を計算。その上でその軌道要素に従って実際に夜空を高速で移動する工具箱を天体望遠鏡を使った観測し、ビデオに納めることに成功した。
 今回、行方不明になった工具箱は大きさが30センチ前後の普通のバックのような形をしたもの。フェトラーさんによると明るさは8等星位としており、こうした小さな物体であってもアマチュア用の天体望遠鏡でも地上からははっきりと追跡できることが明らかになった形だ。

 工具箱を地上から発見したというニュースが話題になっているが、更に凄い展開を見せている。観測によって決定した工具箱の軌道を元に、その現在位置をリアルタイムで表示するサイトが出現したのだ。
 日本上空に接近するのを楽しみに待つのも良し、マップの背景を航空写真に切り替えてプラネタリウム気分かスクリーンセーバー気分に浸るも良し (^_^;)

 肉眼で見るのは無理だが、衛星軌道上の物体が意外に明るいことに驚くかもしれない。当然?誰でも考えるのは、現在位置がトレースされているなら地上からレーザーを照射して光らせたら面白いんじゃないか?ということだろう。月面をレーザーで照射するのは無理だが、1000倍も近い工具箱なら照射出来ないか?

 簡単な原理として、工具箱が輝くのは太陽光線を反射しているからだ。つまり、太陽光線と同じ明るさで照射すれば、工具箱の明るさは2倍になる。太陽の向きとレーザーの照射向き、そして観測者の方向が絡む。だからそんな単純な話ではないが、オーダーとしては太陽光線と同レベルが必要と仮定して間違っていまい。
 工具箱の高度が360キロ程度なので、日本にかなり接近して条件がベストに近い場合は直線距離にして500キロというところだろう。つまり、500キロ先で太陽光線並の明るさを残したレーザー照射が必要なのだ。

レーザーの明るさを解説する

 グリーンレーザーは1ワットあたり580ルーメンである。個人で所有可能なレーザーとしてはかなり強烈な光出力3ワットの機種が使えるとして、1740ルーメン。一方、宇宙空間の太陽光線は14万ルクス程度なので、1740ルーメンでは124平方センチに集中させねばならない。直径12〜13センチだ。残念ながら工具箱が30センチなので全体を照射できず、アウト。
 光出力が10倍の30ワットで照射直径を40センチに出来て、ようやくギリギリだろう。

レーザー銃の有効射程

 まだ問題がある。レーザー光線は500キロ先で直径40センチにまで絞り込めるのか?
 理想的なビーム品質と光学系だとして、グリーンレーザーを直径10センチのレンズでコリメートすると500キロ先では直径3.4メートルに広がる。40センチに絞るには、直径85センチのレンズが必要だ。個人所有は、かなり無理がある。しかし反射式望遠鏡なら個人でも30センチ級を買うのは無茶ではなく、手が届きそうな気もして来る。数十ワットのグリーンレーザーに数十センチの望遠鏡。たかが工具箱を照らしたいだけのために入手しようするのは相当なバカだが、可能性が十分ありそうに感じられるのが怖い。

 でも幸い?なことに、可能性はない。それは大気が存在するせいだ。地上から観測する限り、望遠鏡の分解能はせいぜい1秒角である。大気のゆらきによって光が乱されるからだ。だから、宇宙望遠鏡の価値がある。
 1秒角とは1キロ先で約5ミリ。500キロ先で2メートル半。結局、レーザー光線もその程度までしか絞り込めない。パルスレーザーなら影響を殆ど受けないし出力も桁違いに上げられる。しかし望遠鏡超しにしろ肉眼観測出来ないのでは面白みが無い。
 結局、最後はここに帰着してしまう。

 しかし実は、ここまでは前置き。だって内容は月面照射の場合とほぼ同じなわけで。
 では、工具箱が地球の影に入っている時を狙えば?
 工具箱自体の観測は、地上が夜で工具箱だけに日光が当たっているタイミングで行われた。両方とも日光が当たっていないなら、どうだ?

written by higashino [科学コラム] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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