2014年3月13日(木) 21:44
中央リニア新幹線の走行ルートを巡る、自治体の争い。東京名古屋間では長野がさんざん内ゲバやってくれたが、大阪まで伸ばそうとなると今度は京都と奈良がバトル。こっちもそろそろ常態化しているが、そんなことやってるとマトメて足元をすくわれるぞという記事が目に付いた。
これもまた、目から鱗だ。
科学技術が実用化されるまでには、3つの段階がある。
1)理論的に可能である。
2)工学的に可能である。
3)経済的に可能である。
1)が実現して初めて2)が問題となり、2)が実現して初めて3)が問題となる。例えば特許は2)や3)を実現させたり改善させる発明に与えられるので、1)に反するものは無条件で門前払いとなる。特許が取れない具体例としてわざわざ「永久機関」が挙げられているのは、1)に反するのに嬉々として2)を主張する馬鹿が余りに多かったからだろう。
また、半世紀も前から夢の技術とされ、実現が心待ちされていたのにいつまでも実用化されない。そんな例としてすぐ、リニアモーターカーと核融合が思い浮かぶ。ただし、両者の現在位置は異なる。核融合が2)をクリアできずに苦労しているのに対し、リニアモーターカーは既に3)との戦いに入っている。
理論的に可能であり工学的にも可能であっても、経済的にペイしなければ実用化されない。宇宙開発の停滞は完全にコレである。
リニアモーターカーは、経済性を部分的にクリアして、実用化に踏み出した。周知の通り、まず名古屋まで開通させ、早期に稼ぎを得つつその先に延ばすという方式だ。
ただ、純粋に経済的な面だけを考えると、リニアモーターカーを実用化させなくても支障はない。JR東海は何もロマンで実用化を急いでいるのではなく、その裏には理由がある。
・東海道新幹線の輸送量増強は限界であり、更に存在するはずの需要を満たせない。
・災害時や新幹線メンテ時のバックアップ。
このうち需要に関しては、航空機という代替もある。国内線の需要をリニアに移すことで羽田成田の発着枠を国際線に振り替えできるという大きなメリットはあるものの、これも必然ではない。それに対し、バックアップは致命的に重要だ。災害だけでなく、老朽化インフラの危険とメンテの必要性は最近すっかり知られるようになった。脱線の危険が非常に少ないリニアは、直下型地震に対する安心感もある。
だから中央リニア新幹線を作るべし。計画は既に動き出した。そこで京都と奈良がバトル・・・という現状だが、実は落とし穴があるぞという話である。
東海道新幹線は開通から半世紀も経って老朽化しているし、実際に新幹線を使わずに鉄道で東京から大阪まで行くのはとんでもなく大変である。
では何が落とし穴かと言うと、確かに東京から名古屋まで行くのは大変だが、名古屋から大阪はそれほど大変ではないという点である。新幹線が使えなくても、名古屋と大阪を行き来する代替鉄道には困らない。確かに時間は掛かるが、もともと東京名古屋間に比べると近いので、緊急時には何とか我慢できないでもない。
つまりJR東海としては、東京名古屋間を開通させたら後は放置という選択肢もあるのだ。
JR東海の本拠地は名古屋であり、東京との結びつきを独占強化して繁栄。そして関西は取り残される・・・京都と奈良がバトルやって関西がまとまれないようでは、どんどん名古屋先行期間が長くなる。場合によっては永久に。
木を見て森を見ない恐ろしさに気付かないのは、やばい。
written by higashino [科学コラム] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
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