2008年12月26日(金) 17:36
外部共振器によるDPSSグリーンレーザーの発振には、過去1回だけ成功している。
当時は現在と同じだけの励起LDパワーを叩き込んで、グリーンレーザーの光出力が約1ミリワットしか得られなかった。想定より3桁も低い出力であり、その原因がどうしても判明せず実用化出来なかった。
だが、そのときに共振条件が妙ななことに気付いた。安定共振器の条件を満たしていても共振するとは限らない。より共振し易いはずのパーツ配置にしても共振し易いとは限らない。具体的にはキャビティー長である。キャビティーは短い方が共振させ易いとされるが、共振してくれない状態から更にキャビティーを少し長くすると共振するという逆転現象が存在した。
恐らく問題は、キャビティー内部に定常波が存在せねばならないという部分だ。
レーザーは、誘導放出である。共振器内部を蛍光が往復した時に位相が揃っていなければならない。位相が揃うとは、キャビティー長が蛍光波長の整数倍という意味だ。一般に蛍光波長は少しバラ付いており、たまたまキャビティー長の整数分の1にピタリと一致した波長が共振し増幅される。
問題は、蛍光を発する部分が、ある程度の広がりを持つ点である。
共振条件をシミュレーションした時は、光が100往復しても封じ込められたままであるというのを判定条件にした。しかし、光が封じ込められればそれで共振する訳じゃない。光路長が蛍光波長の整数倍でなければならないのだ。さもないと戻って来た蛍光が誘導放出を引き起こしても位相がズレていて、光が強められない。
シミュレーションでは、往復を繰り返すごとの光路長は毎回僅かに違っていた。蛍光を発する結晶も途中のレンズやミラーも面積を持ち、どの部分を光が通過するかによって光路長が変わってしまう。
この要因により、安定条件を満たしている共振器であってもキャビティー長が特定の範囲に収まるときだけ共振し、それより長くても短くても共振しないという現象が発生するのではなかろうか?
要するに、OCの位置を少し変えて試してみる必要があるってことだ。数ミリの変更は可能である。もともとこの要因があるため、間合いまで変えることが可能な3点支持のOCマウントを採用していた。それが最終試験になって軽量の2点支持マウントに変えたのだった。その時ちょっと心中に引っ掛かりを感じた。OCの位置を変えるべき可能性に気付いていたのに、それを忘れていたから心の奥で警報が出ていたのだろう。
ただ、OCの位置を変えるのはそれほど楽ではない。変えたら改めてOCの向きを調整せねばならない。つまり、キャビティーを取り外して調整台に載せ、調整が終わったら再度キャビティーを取り付けるという手順が必要になる。OCの間合いを少し変更するたびにこの手順を行わねばならない。そして六角レンチ2本を動かしての絨毯爆撃。
しかしやってみる価値はある。なぜなら、理屈の上では共振しないはずがないのだ。1064nmの蛍光は確実に輝いているし、キャビティーの組み立て精度もベストを尽くした。蛍光を封じ込める条件もシミュレーションで確認し設計してある。
written by higashino [レーザー] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
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