Darkside(https対応しました) |
2006年10月5日(木) 17:43
長さ2センチのコイルは、いざ目にすると思ったより長く感じる。直径11ミリのパチンコ玉を加速するならもっと短い単位に分割したい。また、インダクタンスを確保するには短いコイルに多層巻きの方が有利でもある。
そこで短いコイルを想定し、基本特性について1つの概算をしてみた。
内径13ミリはギリギリ。エナメル線の太さは、コイルが小型となることを考慮し1.2ミリを使う。コイル長を12ミリとすると1層に10回巻けるが、現実にはらせん状に巻くため9回半しか無理だ。作業の容易さを考えて9巻きに抑え、8層トータル72巻きとする。
各層を半巻きずらしして巻き線密度を高めたいが、それやると右から左に巻いたものを次層で左から右に巻くことは出来ず、一気に右に戻らないといけない。その部分のジャンパー配線が多層では大変面倒臭い。一般に行われているように、右から左に巻いて右に戻って次は左に戻って・・・という巻き方をすると、下層と半巻きズラシで収めるのは無理。8層巻くには厚みが太さ1.2ミリの8倍になる。
こうして製作する単位コイルは、平均半径11.3ミリ。インダクタンスは117μHとなり、11ジュールフラッシュ電解でピーク500Aに収める目安である88μHを充分に上回る。計算上は434A以上になることはない。少々巻き方がいい加減で誤差があっても、500Aを越えることはないだろう。
銅線の長さは斜めになるロスを無視して計算すると5112ミリとなる。10メートル巻きで売られていることが多いため、半分の5メートルに切ってそれが無くなるまで巻き付ける、という感じで安直に作れるだろう。インダクタンスに余裕あるからな・・・
太さ1.2ミリ長さ5メートルの銅線は、ほぼジャスト50グラムである。フラッシュ電解が20グラム以下。付属パーツや構造材を入れて、1ユニット100グラム以下で作れるだろう。50センチの加速部分に40連並べると重さは4キロ。注入エネルギー440ジュール。他に充電器とバッテリーが1.2キロだから、銃の構造材その他合わせてもシステム重量7〜8キロには充分収まる。
電気抵抗は20度で0.08Ωくらい。回路全体で0.1Ωとすると、ピーク400Aとして発熱は16キロワットにもなる。実際は400Aとして発熱が1ミリ秒続くのではなく正弦波形っぽくなるはずだが、仮に1ミリ秒連続すれば16ジュールも失われる。これはコンデンサーの11ジュールより多い!
あくまで概算だが、とんでもない事態だと分かる。
長さ12ミリ直径32ミリというコイルが、コンデンサーのエネルギーの大半を熱として浪費してしまう可能性が大である。はっきり言って、スイッチング素子を能動的にOFFにする必要無いぞ。サイリスターで電流流しっ放しにすれば、LC共振の1周期が終了した時点で大半のエネルギーは消え去り、どっちみち回収出来る残存エネルギーはロクに残っていないだろう。
0.1Ωに400A流れると電圧低下は40Vであるから、こっちはそれほど悲観すべき数値ではない。
50グラムの銅に11ジュールすべてが消費されれば、0.58度暖まる。一気に30連射してさえコイルの温度は17度しか上昇しない。つまりコイルの加熱に関しては心配しなくて良い。もちろん通電で焼き切れることもないだろう。
スイッチング素子をOFFにする必要がないようにコイルの直流抵抗を高くしてエネルギーを浪費させるのは本末転倒だと以前に書いた。だが、普通に設計しただけでエネルギーの大半は熱となって消えるって結論だ(汗)
では、もっとマトモにシミュレーションやってみると、ピーク電流はどの程度になるだろう?
簡単なLC共振の話なのでBASICでサッとプログラム書いて走らせると、エラーが出て止まった。原因を調べる。うわっ!大馬鹿な見落とししていた!
以下は、自作プログラムではなく普通の回路シミュレーターによる作図である。
緑のグラフは左目盛りで、コンデンサーの電圧。
青のグラフは右目盛りで、コイルの電流。
そう、コンデンサーの電圧がマイナスになっている。当たり前の話なのにボケていた。早い話が未使用エネルギーを回収するためには、フィルムコンデンサー等の極性の無いコンデンサーを使わねばならないのだ。
LC共振の1周期でエネルギーが食い尽くされることはなく、コイルにはピークで約380Aが流れる(コンデンサーのESRの影響が大きいので、あくまで目安)。概算よりかなりロスが少ないのは嬉しいが、これでは通電を適切なタイミングで切らねばマズいことになる。いや、そうじゃない。
携帯銃では重量的に電解コンデンサーを使わざるを得ない。つまり、逆電圧が加わらないようコイルに溜まったエネルギーをフライホイールダイオードで逃がすしかないのである。フィルムコンデンサーも結構容量がでかいのだが、数百ジュールともなるとさすがに重さが問題になる。価格はもっと問題だったりする(汗)
結局、うまくエネルギーを回生して効率を上げる目論見は崩れ去った。
しかし、シミューレーション結果はそれほど悪くはない。一気に充電されたコイルが、電流すなわち磁力をキープし続けている。
実際にはプロジェクタイルの加速に使われたエネルギーが抜けるので電流はもっと早く減少するだろうが、かえって良い感じの電流変化となりそうだ。数ミリ秒ならば数百アンペアに耐えられるダイオードを入手出来れば、電流OFF機能のない普通の小型サイリスターでスイッチング可能だ。
電流はもっと早く減衰して欲しいし、ピーク電流の方は若干余裕がある。コイルのパラメータは最適を目指して今少しシミュレーション繰り返し、決めるべきだろう。
それにしても、世間には電解コンデンサーに逆電圧の加わるコイルガンが多過ぎると思うのは気のせいだろうか?
written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
Generated by MySketch GE 1.4.1
Remodelling origin is MySketch 2.7.4