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2006年10月6日(金) 17:20

ブレーキング

 コイルガンの場合、プロジェクタイルが磁力の中心を通過すれば速やかに磁力を切らねばならない。さもないと、引き戻されてしまう。磁力の中心に近いほど吸引力が強まるため、ギリギリまで大磁力を働かせ、しかし通過した瞬間に磁力が瞬間消滅。そんな都合の良い制御が理想である。
 現実には難しいことは、言うまでもない。

 磁力を切るとは、コイルの電流を切ることだ。しかし、コイルは電流の変化に逆らう性質がある。コイルの電流は急に大きく出来ないし、一度流れた電流を急に切ることも出来ない。それにしても、電流の立ち上がりはともかく、OFFに時間が掛かり過ぎる。フライホイールダイオードに電流がぐるぐる流れ続けて、コイルの直流抵抗でエネルギーが消費されるのを待つだけ。
 これでは、かなりの引き戻し力が掛かってしまう。

(回路1)

 となると、無駄ではあるが抵抗を入れてフライホイールを急速停止させてしまえば良いのではないか?
 どっちみち回生は無理なのだ。現在のところ、極性の無いコンデンサーは残念ながら携帯銃に積めるほど軽くはない。容量単価に至っては桁違いだ。

 しかしこの回路はうまく動作しない。フライホイールに電流が流れると抵抗によって電位差が生じ、ダイオードが導通せずにコイルの電流がコンデンサーに行ってしまう。結果としてダイオードが無い場合と同じようにLC共振が続き、電解コンデンサーには逆電圧が加わってしまう。

 実際には、複雑な回路を組めば電解コンデンサーにエネルギーを回収可能である。もちろんである。

(回路2)

 これは一例である。GTOサイリスターを2つ使用する。最初は両方ともOFFになっており、電解コンデンサーが充電されている。
 トリガーを掛ける時は、2つのGTOサイリスターを同時にONにする。コンデンサーの電荷がコイルに流れ込む。

 コンデンサーの電荷が抜けてしまい、C−とC+の電位が等しくなった瞬間に、2つのGTOサイリスターを同時にOFFとする。その後はずっとOFFのままである。
 すると、コイルに溜まったエネルギーは電解コンデンサーに回収される。再度流出することはなく、未使用エネルギーはすべて戻って来る★
 LC共振回路同様に高速にコイルの電流が抜ける。

 しかし、いざ実装するとなると問題山積である。まず、C−とC+の電位を比較せねばならない。最大330Vあるので、単純にオペアンプに引き込めば済むものではない。また、GTO2はまだしもGTO1のゲートをドライブする回路は電位的にかなり厄介である。
 これらをすべて解決し、パルス大電流回路ならではのパーツ保護対策まで施した回路は相当に大規模となる。多段式と言っても数ステージしかなくてしかも据え置きの装置なら可能だが、携帯銃に20セットも40セットも積めるものではない。

 携帯性を追求すると設計は難しくなり、そしてそれは同時に面白くもある。力ずくで押し通すことが出来ないゆえの面白さ。
 すべてにおいてベストを実現することは出来ない。いかにうまく妥協してバランス良く仕上げるか。何を重視しどこを手抜きするか?そこに個人のポリシーとオリジナリティーが出ると思う。

(回路3)

 フライホイールダイオードさえ仕掛けておけば後はサイリスターをONにしっ放しですべて動作する極めて単純な回路に比べれば、これはかなり面倒ではある。それでも、頑張って回生しようとする(回路2)に比べれば遙かに楽である。
 GTOサイリスターを1つだけ使用する。コンデンサーの電荷が抜けてしまい、C−とC+の電位が等しくなった瞬間にOFFにする。コイルの電流は抵抗で急速消費される。要は、スイッチング素子をOFFに出来れば電解コンデンサーへの回路が遮断されそっちに行きようが無くなる次第。

 (回路1)の抵抗無しと(回路3)を試作し、性能や複雑さを比較検討するとしよう。

 抵抗10Ωで急速ブレーキを掛けた場合のシミュレーション。回生を断念し回路も複雑になるが、その代償として非常に高速に磁場を消せる。抵抗値を変えることで、ブレーキの効きと浪費エネルギーのバランスを調整することも出来る。
 GTOの扱いは面倒であり、うまく動くまで相当に苦労しそうだ。しかしそれだけのモノは得られるかもしれない。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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