Darkside(https対応しました)

2006年10月20日(金) 17:31

光ゲートドライバー

 光ファイバーでスイッチングを行うには、どうすれば良いか?
 やり方は誰でも同じ事を考えるだろう。PIC等で発光ダイオードを光らせて光ファイバーで電送、それをフォトトランジスターかフォトダイオードで受ける。そして増幅・・・ありきたりであるが故に、専用ICも多数出回っていそうだ。ところが、発光ダイオードとフォトトランジスターを内蔵してフォトカプラに仕立てたICは腐るほどあるのに、フォトトランジスターが露出した品は全く無い!
 余計な発光ダイオードを取り去って、PDを直接照射出来るICを作ってくれ〜!と叫びたくなること必至である。どうしてどいつもこいつも余計な皮と発光ダイオードを内蔵してやがるんだ!

 フォトカプラの必要性は分かる。だが、同様の絶縁スイッチングを光ファイバー経由で行いたいという需要はそんなに少ないのか?
 PD剥き出しで光ファイバー接続端子が付いたようなカプラを作ってるメーカーの1つや2つないのか?
 あることはある。しかしそれは鉄道車両用の巨大IGBTにでも使うような品である。フォトカプラでは当たり前な小型パッケージに収まっているものがない。

 もし作っていても、また入手に苦労しそうだな。少なくとも秋葉原の店頭には転がっていない。

 仕方なくディスクリートで組むと、どうなるか?
 左図は素直な回路。入手し易いフォトトランジスターのTPS601Aを使用。強い光が当たった場合の電流は最大50ミリアンペアとなっているが、ここは無難に10ミリアンペアで考えよう。フォトTrは価格差が結構あり、601Aは高価な部類に属する。高価なものは大きな電流が流れてくれるとか、反応が良いとか、暗電流(要はノイズ)が小さいという点で優れる。

 素のフォトトランジスターなら数マイクロアンペアであり、内蔵トランジスターにより4桁大きな電流が流れる。しかしそれでも少ない。そこで、更にQ1とQ2でブーストする。

 光ファイバー経由で発光ダイオードの光が入射した場合の動作。

 601Aに10ミリアンペア流れると想定する。
 その電流の一部がR1を流れる。すると、抵抗値を乗じた電位差が発生し、601Aのエミッター電位が上昇する。大量の電流が流れるほど上昇するが当然6V以上にはならない。R1を流れる電流も6ミリアンペア以上にはならない。

 残りの4ミリアンペア以上は緑の矢印のようにQ1を通してIGBTのゲートに流れ込む。同時に、Q1で増幅された赤い矢印の電流がIGBTのゲートに流れ込む。増幅率100倍とすれば、ゲートには約500ミリアンペアが流れる。

 こうして、IGBTがONになる。

 続いて、発光ダイオードが消えて601Aに電流が流れなくなった場合の動作。

 IGBTのゲートから緑の矢印のようにR1を通して電流が抜ける。5Vになっていれば5ミリアンペア程度だ。同時に、Q2で増幅された赤い矢印の電流がIGBTのゲートから流れ出す。増幅率100倍とすれば、ゲートから約500ミリアンペアが流れ去る。

 これにより、IGBTがOFFになる。

 R1を通して失われる以上の電流を601Aが流せば、IGBTのゲートに電荷が供給されONになる。
 R1を大きくして損失を減らせば、IGBTを容易にONに出来る代わり電荷の引き抜きが遅くなりOFFに時間が掛かるようになる。R1を小さくすればその逆だ。1KΩという値は、GT8G121のゲート電位4〜6Vという定格と、601AのON電流10ミリアンペアのバランスで決まる。
 ON時にR1に電流が流れることは非常に重要で、それによって電位差が発生しIGBTのゲート電位が確実に持ち上げられるのである。

 大電流を流せるGT8G121は例によってゲート容量が非常に大きい。3900pFもある。これを4パラで使用するから、何と15600pFである。化け物FETの2SK3132でも11000pFなのに・・・
 コイルの電流上昇率は5A/μs程度になる。従って、20〜30μsのうちには全IGBTのゲートを確実に4V以上に引き上げねば、負荷バランスが崩れてIGBTが破壊されるかもしれない。OFFにする時は更にシビアである。ON直後は電流が小さいが、OFF直後は電流が大きい。OFFバランスが崩れると特定IGBTに大電流が集中して破壊される。だから崩れるも何も、まとめて一気にゲート電荷を抜いてすべてOFFにする必要がある。

 GT8G121のデータシートでは、51Ω以上の抵抗を入れてゲートドライブするように指定してある (4パラそれぞれに付けるから、合成13Ω程度となる)。素子自体のスイッチングに2μs程度を要する。
 この回路のドライブ能力自体はON・OFF共に1μsを遙かに下回るため、充分な能力がある。後は、601Aの電流を一気に10ミリアンペア以上に出来るような、反応の良い赤外線LEDの選定が重要だ。光出力が大きく、光ファイバーへ導入し易い狭指向性で、波長800nmに近く、反応が速い。となればTLN227が手頃かな。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

この記事へのトラックバックPingURL

Comments

TrackBacks

Darkside(https対応しました)

Generated by MySketch GE 1.4.1

Remodelling origin is MySketch 2.7.4