Darkside（https対応しました）

　今度はバイアス抵抗がキチンと働いているかどうか調べる。赤い→の位置である。
　６０１Ａにレーザーポインターを当てると、電位はサッと５Ｖ以上にアップした。照射を止めると速やかに０Ｖに戻った。想像通りの反応だ。

　問題はＩＧＢＴゲートドライブの出口、緑の↓の電位だ。
　赤矢印が０Ｖに戻ってもＬＥＤはそれから７秒間輝き続ける。つまり、緑矢印は５Ｖのままなのである。
　では一体Ａ１２４２は何やってるんだ？

　最も素直な解釈は、Ａ１２４２が壊れているということだ。実際、散々苦労して原因究明に頑張った挙げ句、パーツが壊れていただけだと判明すれば激しく脱力は間違い無い。だが、今時のトランジスターの初期故障率は無視出来ないほど高いのだろうか？
　やはり別の可能性を探りたくなる。

　それにしてもなぜＱ２が働かないんだ？
　ＦＥＴだったら赤矢印の電位が変わるだけで素直にスイッチングしてくれるのに・・・ちょっと待て！そうだこの回路Ｑ２をＰ−ＭＯＳＦＥＴに交換しても構わない！
　ＩＧＢＴのゲートは最低５１Ωの抵抗を入れねばならない。従って、それによってゲート電荷の充放電速度は制約される。どんな強力なゲートドライバーを用意しても、５１Ωを介してＧＮＤに直結したりＶｃｃに直結したりするより速く駆動することは不可能だ。
　つまり、Ｑ１やＱ２は増幅機能の無い単なるスイッチでも構わない。だったらＦＥＴが使えるじゃないの。

　いや、単に置換しただけでは駄目だ。ＩＧＢＴのゲート電位が下がって来るとＦＥＴの導通をキープ出来ない。ハイサイドとローサイドは入れ替えねば。

　問題は、トランジスターと異なってＦＥＴにはゲート電荷がある。Ｑ１とＱ２でブーストしたのはＩＧＢＴの巨大なゲート電荷を充放電するためである。Ｑ２（あるいはＱ１も）をＦＥＴに置換した結果として今度はそのＦＥＴの巨大なゲート電荷を充放電する羽目になったのでは無意味だ。

　つまり、ＦＥＴで代用するなら可能な限りゲート電荷の少ないものを選択せねばならない。耐圧は可能な限り低く、ＯＮ抵抗は可能な限り大きく・・・そう、通常ならＦＥＴを使う場合にＯＮ抵抗を減らしたい。しかしＩＧＢＴのゲートに５１Ωが４パラで入っていて、合成でも１０Ωを越える。そこにＦＥＴのＯＮ抵抗が１０ミリΩか１００ミリΩかなど、どうでもいい。ＯＮ抵抗が増えればＩＧＢＴのゲート抵抗を減らせば良いのだから、１０Ω程度までなら許容可能だ！
　それどころか適切値な巨大ＯＮ抵抗のＦＥＴであればＩＧＢＴゲートに入れるべき抵抗を省略可能となり、パーツ点数を減らせる可能性すらある。

　一般論としてもＯＮ抵抗の大きなＦＥＴの方がゲート電荷が少なくて済む。普段と逆に、ＯＮ抵抗の大きなＦＥＴが欲しい！

　現在のゲートドライバーを完成させるのではなくバージョン２を製作する方に魅力を感じ、新たに設計してみた。
　通常のハーフブリッジ同様に、ローサイドがＮチャンネルとなっている。それに伴い、バイアス抵抗Ｒ１もハイサイドに移動。

　６０１Ａに光が当たって電流が流れると、Ｑ３で増幅される。ＦＥＴのゲートはＧＮＤに接近するので、Ｑ１がＯＮになりＱ２はＯＦＦとなる。こうしてＩＧＢＴのゲートはＶｃｃに接続され、ＯＮとなる。
　光が当たらなくなるとＦＥＴのゲートはＲ１でプルアップされ、Ｑ１がＯＦＦになりＱ２はＯＮとなる。こうしてＩＧＢＴのゲートはＧＮＤに接続され、ＯＦＦとなる。

　誰でもすぐに２つの疑問が浮かぶだろう。１つは、半端な電圧の時にＱ１とＱ２が同時にＯＮとなり惨事を招くのでは？という点。もう１つはＩＧＢＴのゲートに入るべき抵抗はどこへ？という点。
　回答は、慎重に選択した２種類のＦＥＴ・・・２ＳＫ１３３４と２ＳＪ１８６にある。ともに、鈴商で通販している。高性能のＦＥＴは千石で探す方が早いが、今回のように特殊な選定を行う場合は鈴商が意外においしい。
　５〜６Ｖで動作させた場合ともに、ＯＮでも数百ミリアンペアしか流れない。Ｑ１とＱ２が同時ＯＮになっても破滅的な電流は流れないし対ＩＧＢＴゲートでも同様で、抵抗入れなくても大丈夫と思われる。巨大なＯＮ抵抗の代償としてゲート電荷はＩＧＢＴより２桁少なく、フォトトランジスターを一段増幅しただけで充分高速にドライブ可能。ＦＥＴ自体のスイッチングも速い。