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2006年12月7日(木) 17:21

例題

 ようやく光ゲートドライバーが動き出し、前進出来るようになった。疲れたので、ここで1つ例題を使って久しぶりにシミュレーションやってみよう。気分転換である。
 ネタは有名掲示板に書き込まれた情報(汗)を使う。親切で回答するというより、自分も興味あるからってのが動機。自らは作るつもりのない単段式コイルガンだが、一般的にありがちな条件なので実際どうなのか?

前提
 スイッチング素子 1200V200AのIGBT
 メインコンデンサー 400V充電

問題
 コンデンサー容量どれ位まで大丈夫か?
 言い換えれば、何ジュールまで投入可能か?

回答
 IGBTを捨ててギャップスイッチを使うといい。そして好きなだけでかいコンデンサー付けて下さい。


 ・・・と済ませたのでは身も蓋も無いのだが、前提条件が不足しているため答えを出せない。しかし有名掲示板の住人はさすがである。情報の欠落しまくった質問に対して急所を突いた回答をしている。やはり実際に手ずからモノを作った経験があればこそ、的確なアドバイスが出来るということだ。
 では、前提条件を仮定により補って正面から回答するとどうなるだろう?
 まず、絶対的に重要な情報は3つ。

・IGBTのパルス耐電流
・コイルのインダクタンス
・コイルの直流抵抗

 副次的だが必要な情報として、
・回路配線とIGBTの直流抵抗
・コンデンサーの内部抵抗

 コイルガンは単純極まりない装置だが、考慮すべき事柄は実は多い。厳密な実用的コイルガンを作るのであればパーツのスペックを守らねばならないため、コンデンサーの耐電流なども問題になるし電解使うなら逆電圧防止策も考えねばならない。しかしこの際気にしないことにする。
 質問者は恐らく、メンテナンスフリーを期待していないだろう。コンデンサーの耐圧400Vで容量1万μF以上を狙っているのであれば、電解コンデンサーを想定するがストロボ用を想定していない可能性が高い。

 また、IGBTはOFFも可能な素子だが、最初にONにしたらOFFにせず放置する。IGBTを適切なタイミングでOFFにするためには「設計」が必要だ。さもないと通電すべき時間長を決められない。しかし設計してる訳ないよな・・・つまり積極的にIGBTをOFFにすることは想定されていないはず。

 

1)IGBTのパルス耐電流

 耐圧1200Vは充分に大きい。IGBTをOFFにするのであればコイル電流により強いブレーキを掛けられるため重要なスペックだが、OFFにしないなら本質ではない。問題は耐電流の方。200Aは恐らく直流であり、パルスならもっと大きな電流に耐えられる。
 ところが、IGBTはパルス耐電流がそれほど大きくない。直流耐電流が同じでもサイリスターが圧倒的に大電流パルスに強く、IGBTは弱い。幾つかのIGBTに関して調べたが、直流の2〜4倍でしかない。直流200Aならパルス400〜800Aってことだ。しかもこれはいろいろな保留が付いているし、実際に手元にあるIGBTではどうかも分からない。
 壊さないためには300Aで考えるのが限度だろう。

 ただ、手元にデータシートが無ければIGBTのゲートに与えるべき電圧まで不明となり使いようがない。IGBTのゲート電圧は許容範囲が狭い。IGBTを使うという時点でデータシートの存在は必須であり、だとすればそれを見て正確な限界耐電流を確認すると良い。
 しかしどっちみち大した電流は期待出来ず、IGBTは積極的に電流をOFFにするからこそ採用の意味がある。ONして放置ならサイリスターを探した方が遙かに強力なコイルガンを作れるだろう。サイリスターなら一般的に、直流の20倍程度のパルス電流に耐えられる。

 

2)コイルのインダクタンス

 コンデンサーのエネルギーが同じ場合、インダクタンスが大きいほどピーク電流は減少する。

 プロジェクタイルが存在するとインダクタンスが増大するため、ピーク電流は減少する。しかし、空撃ちして壊れたのでは話にならないため、壊れないかどうかは空芯状態で計算すべきである。

 巻き数が多いほどインダクタンスは増大し、コイルが長いほど減少する。巻き数の効果の方が大きいため、一般的に長いコイルほどインダクタンスは大きい。単層コイルなら計算でもかなり正確に求められるが、コイルガン一般に使うものではLCメーターで実測しないと正確なインダクタンスは分からない。
 多層コイルを単層とみなして計算すると、実際より大きなインダクタンス値になるようだ。つまり、実際に製作したコイルは思ったほどインダクタンスが大きくなくて、思った以上にピーク電流が大きくなる。この観点からもIGBTの限界は余裕を持たせて考えるべきで、実測以前の設計段階ではやはり300Aを想定するのが限界だろう。

 

3)コイルの直流抵抗

 ここでも以前散々シミュレーションしたが、2)と3)は連動している。コイルを一杯巻けば抵抗も大きくなる。
 インダクタンスの大きなコイルを作ろうとすれば、直流抵抗も増大するものだ。抵抗の増大はピーク電流を抑える方向に働く。
 つまり結論として、でかいコンデンサー使いたいならコイルを一杯巻けば良い、ということになる。

 具体的にどれだけ巻けば良いのか?となった場合に、いよいよシミュレーションの出番となる。

 ところで良く聞く話として、コンデンサーの容量がでか過ぎると引き戻しの力が生じて無駄になるというものがある。だから最高のパワーが出るようにコンデンサー容量(あるは充電電圧)を調整する。
 しかし、ある程度ならプロジェクタイルの初期位置を変えて調整可能。コンデンサーの容量が不足しているならプロジェクタイルをコイルの奥に入れて、コイル中心部に接近した初期位置でファイアー!容量が過剰であればコイルから引っ張り出して初期位置とする。
 最大パワーが出る初期位置を探せば、コンデンサーのパワーが過剰なのか不足なのかも容易に判定出来る。過剰や不足の程度も、である。


 長くなったのでシミュレーションは1つだけ示す。ピーク電流が300A以下となるようにする。
 400V30000μFに充電された1800ジュールに達する電解コンデンサーバンク。各コンデンサーは並列接続で合成直流抵抗が50ミリΩに低減可能としよう。
 コイルとコンデンサーを除く、回路とIGBTのON抵抗も合計で50ミリΩと仮定する。残るはコイルの直流抵抗とインダクタンス、つまりはコイル仕様そのものだ。

 2ミリのエナメル線を外径15ミリのアクリルパイプに300回巻き×7層、合計2100回巻く。エナメル被服厚もあるため、コイルの全長は650ミリ、外径45ミリ程度となる。エナメル線は200メートル近く必要となり、重さは5567グラム。直流抵抗は1.1Ω以上。インダクタンスは6ミリヘンリー弱。
 以下はシミュレーションによるコンデンサー電圧 V(vc) とコイル電流 I(L1) の変化である。ピーク電流は約260アンペア。0.1秒以上に渡ってダラダラと電流が流れ続ける。

 コイルガンは電流がピークに達した後に短時間で電流が止まるものほど高性能となる。これは思い切り低性能である。プロジェクタイルの初期位置を手前にしまくらねばならず、最も大電流が流れる頃に磁力の中心から相当に離れた場所にプロジェクタイルが存在することになってしまう。ここまで酷いと、一般に言われる通りコンデンサー容量減らした方がパワーは上となろう。
 やはりIGBTを捨ててギャップスイッチにするか、せっかくIGBT使うのだから20ms あたりで電流をOFFにするしかないだろう。IGBTの耐圧が1200Vもあるので、そこそこ急ブレーキを掛けられる。

 ブレーキング抵抗に3.5Ωを使用し、20ミリ秒でIGBTをOFFにした場合のシミュレーション↓
 サージ電圧がIGBTの耐圧1.2KVに達しないよう注意せねばならない。
 赤いコイル電流に注目。垂れ流しとは比較にならない高速で電流が消えている。ただしコンデンサーの電圧も250V以上残存しており、わざわざ30000μFも用意したのは無駄も極まっている。

 結論として、性能重視ならやはりギャップスイッチにすべき。
 半導体スイッチ使いたいなら改めてサイリスターを探すべき。
 どうしてもIGBT使いたいなら、適切なタイミングでOFFにしてみよう。製作は大変だがその過程で非常に勉強になるだろう。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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