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2006年12月11日(月) 17:11

ゴーストサージ

 コンデンサーを急速放電すると、謎のサージが発生する。例の日本最強の個人所有レールガンでも発生している原因不明の現象である。その振る舞いは、まさにゴーストだ。
 定格330Vのストロボ電解に5Vだけ蓄積し、IGBTを10ミリ秒だけONにした。なぜ10ミリ秒か?それは、コンデンサーから放出された電流がコイルや回路の直流抵抗で浪費され充分に小さくなるほどには長く、IGBTの発熱がヤバくならないほどには短い時間・・・ということで決定した。
 IGBTは通常1ミリ秒以下しかONにしない。そのため、発熱は小さく放熱版を付けていない。

 これは、コンデンサーの電位変化だ。一気に放電した後は10ミリ秒まで振動が続いている。IGBTがOFFになった瞬間にサージは発生しておらず、その時点までに充分にコイル電流が小さくなっていることが分かる。

 今度はONの瞬間を10倍に拡大してみよう↓
 ONの瞬間にもサージらしい波形は見られない。

 更に10倍に拡大↓
 やはり、開閉サージは発生していない。

 更に更に10倍にも拡大したが、ほぼ横一線の波形が現れただけであり、ONの瞬間には何の波乱も存在しない。少なくとも5Vの穏当電圧ではサージの萌芽は皆無。
 こういう場合には、コンデンサーの充電電圧を徐々に上げながら試験するのが常道だ。しかし、5Vが幾ら低い電圧とは言え、IGBTのスイッチング速度は本番と同じでありサージの気配くらいは見られてもおかしくない。となると、OFF時が怪しい。
 IGBTをONにした瞬間にサージが発生するとすれば開閉サージしか考えられないが、オープン時サージでダイオードを割るほどの威力が出るとは信じ難いのである。

 今回の試験はPICでキッチリと10ミリ秒間だけIGBTをONにした。これに対し、初射撃時は手動でレーザー光線を光スイッチに注ぎ込んだ。ON時はともかくOFFまでの時間やOFF瞬間の光の当たり具合がまるで不明。
 フライホイールダイオードに流しっ放しで事実上OFFにはしないつもりだったので手抜きして適当に手動で光を当ててしまったが、それはやはりマズかったと思われる。IGBTがOFFになった場合のコイル電流バイパスを付けていないため、コイル電流が残存した状態でIGBTがOFFになってしまうと強烈なサージが発生する。

 コイルが存在しなくても回路自体にインダクタンスは存在するので、電流が停止していない状態でスイッチがOFFになるとサージが発生する。
 ストロボフラッシュの場合、キセノンフラッシュ管の導通しなくなった時にOFFとなる。まだ電流が残っているのにいきなり導通しなくなるような特性を持ったフラッシュ管であればサージ発生源になるだろう。SSY−1純正フラッシュ管と小沢電気フラッシュでそのあたりの特性が異なっていた可能性はある。
 コイルガン初射撃時には通電時間が実際は不明。コイル電流が残っているのにIGBTがOFFになったのかもしれない。

 だが、IGBTがOFFになった瞬間のサージだとすれば、破壊力は充分だが現実に発生した被害を説明出来ない。なぜなら、逃げ場を失ったコイル電流が発生させる爆発的パワーのサージは、赤矢印の位置に発生するからである。

 破壊されるとすればOFF直後のIGBTやそれに付属する逆電圧保護ダイオードであり、それらが無事なのに1N4007が破壊されるのは理屈に合わない。一方で、発生理論は不明だがもし緑矢印の位置にサージが発生しているのであれば、前回も書いた通り破壊されるのは1N4007の前にF10P40Fのはず。これまた理屈に合わない。
 このサージは、まさにゴーストだ。壁をすり抜ける幽霊のごとく、1N4007だけを破壊しやがる。

 SSY−1射撃時の現象にそっくりなので原因も同じと考えてしまったが、こうなると誘導サージの可能性もあるか。
 コンデンサー充電器とメインコンデンサーの間は結構配線が長い。そこに発生した誘導サージが1N4007を破壊したとしよう。この場合、1N4007の位置が問題である。SSY−1の時はメインコンデンサー至近に取り付けても破壊された。だが誘導サージであれば、位置によっては破壊されないのではないか。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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