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2006年12月13日(水) 17:11
パチンコ玉を探し出し、昨日の8ミリスチールボール代わりに撃ってみた。直径が11ミリになると重さは2.6倍。まるで存在感が違う。しかし、それだけ重さが違っても見た目遜色ない勢いで発射された。吸引の反動でコイルを止めていたガムテープが剥がれる。初速は下がっていないか、下手すれば上がっていそうだ。
元々直径11ミリを想定した内径13ミリのコイルなので、8ミリより遙かに効率良く磁力が働くだろう。
昨日も書いたが今の発射装置はいいかげんである。
・コイル固定が甘いため発射時に倒れ込み、運動量を大幅ロスする。
・コイル電流のブレーキ機能があるのに事実上使われておらず引き戻し力が大きい。
・コイルを磁気シールドで覆っておらず、超短いコイルからは磁束漏れまくり。
それなのに想像より遙かに性能が良い。磁力を受け易い円柱形のプロジェクタイルではなく球体のパチンコ玉を使っていることもあり、通常のコイルガンより性能を上げ難いのでは?と性能面では控えめに予想していた。上記問題点をしっかり煮詰めて性能を向上させ、それでもこのコイル1つで秒速10メートルを出せなければ開発断念かもしれない・・・と覚悟していたのである。ちなみに秒速10メートルは効率2.5%となる。
1つで秒速10メートル。40段にして空気抵抗もあるから秒速60メートル。それなら大成功もいいとこだろうと。
また、直流5A流した時に発生した磁力が想像より弱かったことも悲観論の根拠だった。5Aで発生した磁力では、パチンコ玉の自重を支えることさえ出来なかったのである!
例え500A流しても加速が100Gに達せず、そうなると性能的には論外かも・・・ところがパルス放電いざやってみると、快調なのだ。初速を計測しあれこれ試さないとはっきり言えないが、現状のいいかげんな部分を煮詰めると効率10%だって狙えるかもしれない。パチンコ玉を100円コンデンサー1個で秒速20メートルに加速出来れば効率10%となる。
おかげで、今後の計画を変更することになった。(後述)
そもそもなぜこんなに効率が良いのか?
100円コンデンサーと小さなコイル1個だけでハンドコイルガンを作っても、室内や5メートル程度の射的なら充分遊べそうである。空き缶に穴は開けられなくても中身入った缶を転倒させる位はできるから楽しめない訳じゃない。充電は即座に完了しシステムも軽量だから使い勝手良好。
この効率の良さは、コイルガンが小規模だからと考えられる。
効率を上げるには?
磁力は逆2乗則が働く。発生源までの距離が近くなると2乗で力が大きくなる。実際には磁力の発生源が「点」ではないことと磁力線の形状により単純ではないが、コイル磁力が最も強くなるコイルの真ん中、そこまでの距離が近くなると急激に磁力が強く働くのは間違い無い。
短いコイルで短距離加速させると、磁力の中心とプロジェクタイルの平均距離が短くなり、平均的に強大な磁力を受ける。このため、電磁石の持つエネルギーが運動エネルギーに変わり易くなる。
コイルガンの効率アップには、プロジェクタイルと磁力の中心の平均距離を短くするのがキモである。
平均距離の短縮には?
平均距離を短くするには当たり前だが多段式が効果的となる。それ以外には、
1)コイルを短くする・・・長いコイルでもコイル中心付近までプロジェクタイルを挿入してから通電すれば良いが、無駄になる磁束が増える。
2)通電時間を短くする・・・長時間磁力を発生させると、その間のプロジェクタイルの移動距離が長くなる。つまり、平均距離も長くならざるを得ない。
3)低速であること・・・磁力発生期間の移動距離が短ければ、平均距離も短く出来る。
今回このすべての条件が揃っている。コンデンサー容量を減らしたことで、2)が実現している。だが、これ以上ユニット単位のコンデンサー容量を減らすと、必要なユニットが多くなり過ぎて煩雑だ。そう考えると、コイルガンの初速を上げるのは容易ではないと分かる。
多段にすれば当たり前だがプロジェクタイルが次第に高速になる。つまり、3)には頼れなくなる。1)を追求すると条件が更にキツくなるから結局は2)が勝負である。
コイルガン効率アップの急所。それは、通電時間の短縮である!
通電時間の短縮には?
コンデンサーのジュールをこれ以上減らすと段数が増え過ぎて製作が大変になる。ジュールを減らさず通電時間を減らせば、ワット数が増大する。つまり、電圧を上げるか電流を大きくすることになる。
どっちに転んでもスイッチング素子がネックになるし、半導体スイッチを断念することで素子の問題を解決したとしてもワット数が大きいままなので回路の抵抗で失われるエネルギーは減らせない。
つまり通電時間の短縮にも限界があり、コイルガンは初速が上がるほど効率が低下せざるを得ない。重量弾を低速で発射するのに適した装置という定評は正確なのだ。
ただし、以上を承知の上でコイルガンで高初速を出せる装置を設計するのも面白い挑戦ではある。
最終的に40段も重ねようとしたのは、遙かに効率が悪いと覚悟していたからである。一杯重ねないと初速が上がらないだろうと。だが、目の前で撃ち出されるパチンコ玉を見ると予想外に効率は高い。となると、40段も重ねると初速が上がり過ぎて効率が悪化しそうである。効率より命中率優先で製作を始めたが、20段でも40段でもパワーに大差出ないのであれば意味が無い。そりゃ少しは差が出るだろうが、あらゆるリソースを2倍も投入して得るほどの価値があるかどうか?
20段どころか8段でも相当に遊べる性能が出せそうなのだ。
パチンコ玉を秒速40メートルまで加速出来れば、10メートルの射的は問題無し。山なりの弾道で30メートル先を狙うのもゴルゴ13遠距離射撃気分で楽しめるだろう。それ以上のパワーが欲しいならスリングライフルでも使った方が良い。遙かに軽量かつ安い。
当初予定では最終製作物コイルガン40を考え、その前段階としてコイルガン8を考えた。だが、8段コイルガンを最終目的とした方が良い。8段なら効率性と製作の容易さを確保したまま充分遊べる性能も出せるだろう。
コンデンサーが87ジュールしかないので充電も手軽。効率5%強を実現すれば秒速40メートルになる。
大型拳銃サイズのコイルガンでパチンコ玉を秒速40メートルで発射。恐らくスチール缶は撃ち抜けないけど不満ですか?
いや、不満だ。複雑で高価な電子装置を使いまくった挙げ句、スリングショットにも劣るパワー?
そんな考えはあるだろう。しかし、コイルガン8規模の装置ならボウガンやスリングショットには無理な用途が開ける。それは、ラジコン戦車への搭載である。
表サイトではもともとエアガンを搭載したラジコン戦車を扱っている。携帯レーザーに手を出した時も、あくまでその気になればラジコン戦車に搭載可能な装置に限定ということだった。自分が作る携帯レーザーや携帯コイルガンが、やたらラジコンバッテリーにこだわっているのも根は同じである。
すぐには無理かもしれないが、もしかしたらラジコン戦車に積めるかもしれない。その可能性を頭の片隅に置いているからこそ、ラジコンバッテリーで動作させることが重要なのだ。
ボウガンやスリングショットをラジコン戦車に搭載し、少なくとも連射可能な機構を実現するのは非常に困難である。しかし、コイルガンなら出来ないことはない。
試作コイルの直径は2センチ半。これを8段重ねにした主砲は普通のラジコン戦車に積むには太過ぎる。ところが、戦車ファンなら誰でも知っているストームタイガーという第二次世界大戦の戦車があって、口径38センチのロケット砲を搭載していた。タイガー1を改造した戦車というか駆逐戦車か。
ちょうど表サイトで製作停止中の16分の1なタイガー1がある。これをストームタイガーに改装完成させ、コイルガン8を積んだら面白いのではないか?元がロケット砲だからコイルガンならではの低速重量弾は気分ピッタリである。
しょうじき、目の前にある単段コイルガンを積んだだけでもかなり遊べると思う。
大問題なのは、ラジコン戦車が電子機器の塊である上に電波で操作されることだ。電磁ノイズを発生させまくるコイルガンを積んで撃ったらどうなるんだ?
だが、うまく設計すれば電磁ノイズは意外に抑えられそうな感じがする。ラジコン装置側の対策と併用すれば、充分に実現可能性はあると踏んでいる。ゴム銃でも代用可能なコイル拳銃作るよりも面白い挑戦ではなかろうか?
エアガンは新たな規制が入り、パワー1ジュールでも違法となってしまった。ラジコン戦車にエアガンではなくコイルガンを搭載することで、新天地を開こう!
written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
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