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2007年1月6日(土) 16:39

困ったな

 自分は徹底的な実用志向であり研究目的ではないのだが、何だか妙に研究発表っぽくなっている。今日はコイルガン発射時のメインコンデンサーの電圧変化を実測してみた。先日オシロが使えなかったのはコンデンサー充電器よりもプローブの位置が問題だったと判明。外部トリガーが認識されるためにはGNDプローブの電位が問題であり、好き勝手な場所は測定出来ないのだ。
 研究なら弾速測定や電圧測定は当たり前だと思うのだが、日本ではデータを公開しているサイトが妙に少ない・・・

 使用コイルは最初に作った12ミリ長の方で、実測で72μHくらいである。

 330Vに充電したコンデンサーを放電するにあたり、IGBTの通電時間を160μ秒(橙)、240μ秒(緑)、320μ秒(黄)と変化させてみた。通電時間の違いが電圧変化にちゃんと反映していることから、射撃時にONとなったIGBTはちゃんとOFFになっていることが確認された。
 回生型回路なので、IGBTをOFFにした後に電圧が回復している。コイルに蓄えられたエネルギーが回収されたのである。ただ、シミュレーションに比べると回収出来たエネルギーが異様に少ない。240μ秒では200V程度まで回復するはずが40Vまで回復しているに過ぎない。
 ところが、コンデンサーの放電時間はシミュレーションにほぼ合っている。コイルのインダクタンスが70μHの場合に約200μ秒となっていた。ということはピーク電流も想定通りで、400Aを少し越える程度になっていると思われる。

 回収エネルギーが少ないのは、IGBTの一方がちゃんとOFFにならずフライホイールが続いているからかもしれない。要チェックである、だが、ダイオードによるロスが大きいだけかもしれない。シミュレーションは理想ダイオードで行った。ただ、回収効率は悪くてもサージ吸収はうまく出来ているようだ。更には極性反転も発生せず、電解コンデンサーの負担が抑えられている。
 ON直後に軽く電圧が上昇しているのは開閉サージか?
 大したサージではないがこれを考えると、IGBTやダイオードの耐圧が400Vあるからと欲張ってコンデンサー電圧を360Vにに上げたりするのは得策ではない、330Vのままで行く方が良いだろう。マージンを食い潰すのは「実用品」のやることではない。

 お次はIGBT通電320μ秒において、空撃ち(緑)とパチンコ玉発射(黄)の比較。
 鉄球が通過するとインダクタンスが増大し、コンデンサーの放電に時間が掛かるようになる。しかし、その差は思ったより小さい。空撃ちで壊れないような設計をしておけば、パチンコ玉を撃ち出す際にもパーツのスペックは無駄にならずに済みそうだ。

 ところで、放電に200μ秒程度を要するとすれば、コイル電流は400μ秒程度流れ続けることになる。回生型ではほぼLC共振そのままの電流波形となる。
 加速時間400μ秒で秒速10メートルに達したとして、大雑把に加速度一定とすれば加速距離は?単純な物理の問題である。答えは2ミリ。平均加速度2500Gにして5グラム半のパチンコ玉には14キロ近い吸引力が働くということに。秒速10メートルは遅く聞こえるが、相当に大変なのである。
 だがそれ以前に、加速距離2ミリという数字に違和感を覚えないだろうか?

 直径11ミリのパチンコ玉に、加速距離2ミリ・・・もちろん実際には加速度一定ではなく、もっと長い距離を加速し続けているだろうが・・・

 通電時間が短いほどコイルガンの効率が上がると判断したのは、磁力の中心とプロジェクタイルの平均距離が短くなるからである。だが、現実には両者の距離が短ければ短いほど単純に作用磁力が強くなるとは言えない。プロジェクタイルの大きさが作用距離に比較して無視出来なくなれば、単純な逆二乗則は成立しなくなる。
 つまり、磁力の中心とプロジェクタイルの平均距離は短ければ短いほど良いというものではなく、プロジェクタイルの大きさ・形状に応じた最適距離があるのではないか?

 2ミリしかない加速区間を、その最適距離にピタリと合わせるのは大変だ。コイル中心を見ながら合わせれば済むのではないのだから。最適間合いに合わせられれば高い効率が出せるが、少しズレただけで効率は激減する。初期位置固定で通電時間の方を変えてもうまく行かない。
 もっと長い区間に渡って加速させた方が調整が容易となり、結果として簡単に効率を上げられるかもしれない。
 初期位置手持ちで何度も撃っていて、普通は室内でも山なりの弾道なのにたまに直進弾道でズバっと気持ち良く飛んで行くことがあった。

 取りあえず新顔のインバーターを動かしていて時々発振が止まる異常発生。
 それこそ脈絡も無しに充電途中で発振が止まり、ランダムな秒数を経過するとまた発振が再開するのだ。そうこうするうちにインバーターから煙が!(またかよ)

 バッテリーが非力なのでそれほど派手なことにならなかったが、どこがマズかった?
 燃えたのは入力側に入れたコンデンサーだった。メインの100μF×3に追加したのは手元にあった10μFのチップ積層セラコンだが、実はチップタンタルだった。マークが付いてるので極性があるということだ。
 紛らわしい。

 IGBTゲートドライバーで使用したのと同じチップ積層セラコンに交換し、メインのコンデンサーも試しにオーディオ用に交換。耐圧6.3Vと4N向きで1000μFだ。

 これで快調に復活した。充電途中で止まることもない。

 ところが今度は、スタートで止まるようになった。2SK3132が冷えると発振しないのである!
 発振しないまま通電していると、だんだんK3132が過熱する。そして突然発振が開始する。一度暖まればずっと快調だ。室温は11度。

 スペックシートを確認すると案の定だった。K3132は温度が上昇するほど低いゲート電圧で動作するのだ。つまり、ゲート電圧がキツいのだ。困ったぞ。

 加速距離が2ミリから4ミリに長くなれば理論上は効率がダウンする。だが、その程度の伸びなら大幅には落ちないだろう。調整が容易となるメリットが大きいかもしれない。
 コンデンサーが同一の場合、通電時間を伸ばすにはコイルのインダクタンスを増やせば良い。今の卓上実験装置は簡単にコイルを交換して試せる。もっといろいろなコイルを試作してみよう。また、パチンコ玉を前提にすればコンデンサーを2つにした方が無理が無いかもしれない。その場合は他のハードは変更不用だから注入ジュールを増やせる分だけ面白そうだ。

 シミュレーションでは、メインコンデンサーを200μF→400μFに倍増させた場合に、コイルのインダクタンスを100〜120μHにするだけでピーク電流を現状並に抑えられ、通電時間は2倍となる。かなり製作は容易である。
 しかし充電時間も2倍となる。インバーターの動作が怪しくては困る。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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