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2007年4月11日(水) 17:10

コイルガン・シミュレーター

 多段式は考慮すべきパラメーターが飛躍的に増えるため、シミュレーションの助けを借りずに設計するのは難しい。しかし、コイルガンは容易にシミュレート出来ないのも事実だ。単純なくせに非常に難しい。そこで、単純なモデルを使用して近似シミュレーションしてみよう。
 非常に役立つのが、ビオ・サバールの法則だ。

 円形の導体に電流がぐるぐる回って流れている。この場合、中心線に沿った位置であれば、磁場の強さを簡単な式で表せる。
 コイルは1本の長いエナメル線を螺旋に巻くが、多数の独立した円形の導体だと近似すればこの法則を適用し、中心線の任意の位置における磁場の強さが計算可能となる。

 プロジェクタイルに働く吸引力は、前後の磁場の強さの差に比例する。プロジェクタイルを中心線に沿った「長さはあるが太さはない」物体とみなせば、吸引力も計算出来る。前後2点の磁場の強さを計算し、その差を出せば良い。
 実際には、相対的な吸引力はともかく果たして絶対値がどこまで使い物になるか疑問が残る。現実に使用するのは太さがないどころか、長さと太さが同じパチンコ玉である。ここで登場するのが実測値である。実際にシミュレーションを実行し、実測済の弾速に良く適合する比例定数を採用すれば良いのだ。

 コイルのインダクタンスも実測値を使用する。放電時のコイル電流Iの変化は、既にシミュレーション実績があるし実際の測定ともかなり合っている。
 こうしてモデルが出来れば、同じコイルを多数並べたシミュレーションも可能となる。多段式の製作は非常に手間が掛かる。開発は効果的に行いたい。
 今や単段式で実験測定値が溜まっているから、シミュレーターを作っても机上の空論とはならず威力を発揮するだろう。

 多段式はSタンク搭載用を睨んで直径7ミリのスチールボールを使うつもりだった。しかし気が変わり、当分の間は引き続いてパチンコ玉を使いたい。パチンコ玉に適合したコイルの製作その他ノウハウが溜まっているし、Sタンク製作は容易に着手出来る手間暇ではないし、そうなるとやはりコイルガンは重いプロジェクタイルの方が魅力的なのだ。
 パチンコ玉の便利さも捨てがたい。高い精度のくせに安く、入手も容易。コイルガンの弾丸に使用可能な手頃な物体の中では日本最大数の汎用工業製品であり、誰でも実験の追試が容易に可能。更にはコイルガンの強力なライバルであるゴム銃でも愛用されるため、そっちとの比較もやり易い。

 さて、シミュレーションする際はコイルをモデル化せねばならない。
 左はコイルの断面図。エナメル線をその太さの半分ずつズラして層を重ねれば、巻き線密度を上げることが出来る。だが、現実にはこのように綺麗に巻くのはまず無理。なぜなら、最内層を左から右に巻くとして、次の層は右から左に巻くものだからだ。次の層も左から右に巻こうとすればエナメル線を右端から左端にどうやって戻すか?

 太さの半分ズラシでギッシリと巻き重ねるためには、エナメル線の向きが揃っていなくてはならない。さもないと重ね合わせられない。

 従って、どの層も同じ位置に巻かれるとみなした方が現実に合っている。計算も楽だ。

 図の場合、1層あたり16巻きでそれが4層になった合計64巻きである。この64巻きは1本のエナメル線としてつながっているが、シミュレーションでは独立した64個のリングであるとみなす。
 コイル内径をr、エナメル線の太さをLとする。最内層の半径Rは、

R=r/2+L/2

 である。そんなリングが16個。同様に第2層の半径Rは、

R=r/2+L/2+L

 となる。これもまた16個だ。以下、層が上になるごとに半径はLずつ大きくなる。それぞれのRをビオ・サバールの式に代入する。コイル電流が与えられればコイル中心軸上の任意座標における磁場の強さが算出される。64個のリングが発生する磁場を足し合わせたものだ。
 パソコンを使えば容易に計算可能である。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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