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2007年4月15日(日) 15:05
では、ある程度の長さがあるプロジェクタイルならどうだろう。
働く吸引力は、磁場の強さに比例するのではない。プロジェクタイル前後の磁場の強さの差に比例する。ここでは単純モデルとして太さを無視する。各位置における吸引力の相対的な強さを、いろいろな長さのプロジェクタイルで計算してみた。プロジェクタイルの位置とは、その中央の位置である。
吸引力はコイル端やや手前で最大となり、これまたコイルの中央付近では急速に吸引力が減少している。また、位置によらずプロジェクタイルが前後に長いほど吸引力も大きくなることが分かる。同じ重さのプロジェクタイルであれば、出来るだけ細長いものを使用した方が初速が向上すると分かる。それは誰でも知っている事実だが、シミュレーションでも裏付けられた。
次に、コイルの長さを2倍の34ミリとして同じ計算をやってみた。比較すると興味深いことが分かる。
すなわち、プロジェクタイルが短いとコイルが長くなっても影響が小さいのである。一方ではコイルが長くなると直流抵抗が増大し、大量のロスが生じる。やはり、パチンコ玉のように短いプロジェクタイルでは短いコイルが適している。
大パワーのコイルガンを実現するには、細長いプロジェクタイルが有効であり、細長さに見合った細長いコイルを使うと良い。これまたみんなでやっていたことだ。
しかし実用を考えれば球形プロジェクタイルが魅力なのは言うまでもない。パワーアップに不利な鉄球を使用してパワーを出したければ、コイルを短くしてその分だけ段数を増やすのが有効な戦術であると考えられる。予想通りである。
ただ、シミュレーションはまた現実に合わない結果も示している。吸引力はコイル端より手前でも強力に働くとの結果である。もしこれが正しいのであれば、プロジェクタイルの初期位置をコイルより手前にするのが良さそうである。
つまり、右図のCの付近である。これならば、吸引力の大きな区間を有効に加速に使用出来る。
一方、Aのようにコイルの奥から加速を開始したのでは、吸引力の小さな区間しか使えず、まるでパワーが出ない。
ところが、現実には初期位置をBの付近にするのがベストなのだ。
初期位置を変えながら射撃してみればすぐ分かるが、プロジェクタイルの半分がコイルに入っていて半分が出ている。そんな位置に置いてから撃つのが最もパワーが出る。だからこそパチンコ玉保持ピアノ線を、苦労してもコイル内部に張りたくなる。
Aではパワーが出ないのも現実に経験可能な事実である。ところが、Cでもまたパワーが出ない。シミュレーション結果からは納得出来ない。
なぜこうなるかと言えば、コイルに挿入されたプロジェクタイル自体が鉄心としても働くからだろう。
コイルガンでは弾道を確保すると同時に磁気飽和を防ぐため、通常は空芯コイルを使う。だが、実射時は必然的に鉄心入りコイルとなる。この場合、磁気飽和の問題が生じる代わり、コイルが発生する磁場も強化される。
特に初期位置直後すなわち放電直後は、まだコイル電流が増大し切れていないため磁気飽和し難い。つまり、鉄心の効果が存分に発揮される。
Cではプロジェクタイルが鉄心とならないため磁場が強化されず、磁場の差も小さいままで吸引力が小さくなる。それに対し、Bはコイルに侵入した半身が鉄心となり磁場が強化される。ただでさえ磁力の大きな進行方向側だけ更に強化されるため磁場の差が大きくなり、大きな吸引力が働く。
プロジェクタイル内部を磁力線が誘導されたりヒステリシスの存在など、複雑怪奇な現象が磁力にはつきまとう。そのため、厳密なシミュレーションが極めて難しい。
だが、ある程度の近似と割り切ったシミュレーションなら可能だろう。そして、近似と言えるほどの計算をしたいのであれば、プロジェクタイルが鉄心として働く効果は恐らく無視出来ない。
無視したらどうなるかを先にひとまず試してみるが、現実の測定と異なる初期位置をBよりCにした方が初速アップという結果が恐らく出るのではなかろうか?
written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(1)] [TB(0)]
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『厳密な話を始めると』
実はプロジェクタイルの太さを無視するのはマズいんですよね。というのも、材質は鉄など一定のものを使うため、長さが2倍になれば断面積は半分になります。単位面積あたりを通過する磁力線の本数差が大きくなっても断面積で相殺されてしまう。
そうなると、実際の加速力は果たして大きくなるのか?
現実のコイルガンではプロジェクタイルが細長くなればコイル内径を小さく出来ます。それによって磁場を強く出来るので、ほぼ間違いなく細長い方が有利です。
しかしこのあたりの厳密な話は追求しません。なぜなら、自分的にはプロジェクタイルの最適長を探るつもりがないからです。プロジェクタイルは球形と決めています。最適なコイル長には興味がありますが、最適なプロジェクタイル形状には興味がありません。
written by IDK