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2007年4月20日(金) 17:31

回生型シミュレーション

 シミュレーターを作るためには、磁場だけでなく放電も計算せねばならない。磁場はコイル電流に比例するため、コイル電流の時間的変化が分からなければ、磁場の強さも分からないのである。
 単純なフライホイール型放電コイルガンなら計算してくれるサイトもあるので、スイッチング素子のスペックを決めるためにピーク電流を知りたいだけであれば苦労はしない。また、回生型は LTspice などフリーの回路ソフトで計算可能だ。しかし、発生磁場と組み合わせてプロジェクタイルの速度計算させるような複雑な処理を自前ではない回路ソフトに実装するのは難しい。
 それに、LTspice は必ずしも正確な結果を出さないようなのだ。

 ストームタイガーの主砲コイルは実測343μHである。直流抵抗は0.5ミリ銅線10メートル。これに、GT8G121やFUSN4など実使用素子の特性をスペックシートに基づいてモデル化し、自作のソフトで計算したのが下のグラフである。コンデンサーのESRは不明なので20ミリΩにしてある。
 赤はコンデンサーの電圧で、初期330V。緑はコイル電流でピークほぼ190A。グラフの横幅は2ミリ秒。空撃ち

 3つの曲線が重なっているが、IGBTの通電時間を640μ秒・800μ秒・960μ秒に変えて重ねたものだ。青く裾を引いているのは、IGBTをONにしっ放した時のコイル電流。早い話がフライホイール型の場合である。ローサイドIGBTが壊れた場合もほぼ同じカーブを描く。
 見ての通り、サイリスター等で流しっ放しにするとコイル電流がダラダラ止まらない。これに対し、スパっとゼロになるのが回生型の強みである。コンデンサーの電圧が高いうちに回生を開始すると急激にコイル電流を止められる。コンデンサーは電圧が高い状態であるほど回収能力が高い。初弾の充電に時間を掛けてもいいなら、過剰容量のコンデンサーを用意することでコイル電流を急速停止させられる。

 残存電圧はそれぞれ152V・91V・43Vである。実測は157V・107V・68Vであり、実測の方がエネルギーにしてコンデンサー容量の1〜2%大きくなっている。これは、誘電吸収で説明可能だろう。現実に、電圧計を見ると放電直後に数秒掛けて2〜3Vはじわじわと上昇する。
 電解コンデンサーで普遍的な、放電電圧の上方ズレを考慮すると、シミュレーションと実測は非常に良好に一致している★

 面倒なのでダイオードの順回復時間はゼロ扱いしている。しかし、大勢に影響なさそう。ピーク電流も190Aから大きく外れていないはずで、スイッチング素子は2パラで充分にマージンがある。更にパチンコ玉を装填すればインダクタンスが大きくなり、ピーク電流は低下する。
 ちなみに、回路抵抗やスイッチング素子のロスが変化しても、結果グラフには予想外に影響が小さい。圧倒的な影響力を持つのがコイルのインダクタンスである。だから、きちんとしたLCメーターを使って現実のコイルを実測しなければ、シミュレーションはまるで役に立たなくなる。

 以前 LTspice で回生回路を計算した時は、残存電圧が遙かに高く出ていた。実測が計算より遙かに低いことに悩んだ。先日のように、サージでエネルギーが失われたせいでは?とも疑った。だが、真相は LTspice が間違っていただけのようだ (^_^;)
 製作を進めるコイルガン・シミュレーターは自作なので、問題なし。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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