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2007年4月21日(土) 17:02

仮シミュレーション

 任意位置での吸引力が計算可能となり、任意時刻でのコイル電流もかなりの信頼性で計算可能となった。そこで、両者を組み合わせて簡易シミュレーターを作ってみる。
 あくまで叩き台でしかない簡易版なので、鉄心効果は無視している。プロジェクタイルの進入によるインダクタンス上昇も無視している。更にはエネルギー保存則まで(汗)
 エネルギー保存則。つまりプロジェクタイルが加速されてもコイル・コンデンサー系の合計エネルギーは減らない。というのも、現在モデルにしているコイルガンでは運動エネルギーに変換されるのは3%以下であるから、エネルギー保存則を無視しても誤差はその程度に収まる。総合的な誤差が1割以下に収まれば大雑把な傾向は読める。だから手間を省いたのだ。

 そんな訳で、細部をつついても意味のないグラフである。横幅が2ミリ秒。赤はコンデンサー電圧、緑はコイル電流。
 黄色がプロジェクタイルの速度、水色がプロジェクタイルの位置。縦スケールはそれぞれ秒速20メートル、20ミリとなっている。

 これは、例のモデルコイルを使用し、11ジュール放電である。シミュレーションを開始してすぐ、加速定数をどう設定しても実測値を説明出来ないと判明。IGBTのON期間が320μ秒から560μ秒まで初速がほぼ一定という結果は、あり得ない。つまり、実測当時既に放電回路のローサイドIGBTが壊れていたと判断される。
 そこで、フライホイール型として実測初速に合った加速定数を探した。プロジェクタイルの前後幅を11ミリとした場合、加速度が(磁場差)×(コイル電流)あたり0.0186m/s2であると設定すると良い感じになった。

 プロジェクタイルがコイル中心に達する頃には放電がほぼ終了しているため、引き戻しは僅かである。それだけ加速が強烈なのであり、加速開始から250μ秒後に2088Gを記録する。発砲すると4000分の1秒で約11キログラムの反動を食らうのだから、いい加減な工作は通用しない。

初期位置 初速m/s
+5mm 4.41
+4mm 5.72
+3mm 6.93
+2mm 8.04
+1mm 9.00
0 9.78
-1mm 10.37
-2mm 10.73
-3mm 10.84
-4mm 10.65
-5mm 10.16

 このモデルにおいて、プロジェクタイルの初期位置をズラして初速の変化を調べてみた。パチンコ玉の中心がコイル端、すなわち半球がコイル内に半球がコイル外にある状態が0である。それよりコイル内部に入ると+とし、コイル外部に出ていれば−としている。

 コイル内部にパチンコ玉を突っ込んでから射撃すれば著しくパワーダウンする。これは実感に合っている。だが、パチンコ玉を手前に引き抜いてから射撃するとパワーアップするというのは、全く実感に合わない。現実には1ミリか2ミリなら僅かにパワーアップするか同一レベルの威力かもしれない。だが、3ミリ以上も手前から射撃してパワーアップはあり得ない。
 鉄心効果を無視するとシミュレーションが明らかに現実を反映しなくなる。

 では、どのようにモデルを修正すれば良いか?
 実はこれが非常に頭が痛いのである。コイルが1個だけなら幾らでも近似モデルを作れる。だが、コイルが2つあってパチンコ玉が両方の境界付近にあればどうなるか?そしてその時に2つのコイルに流れている電流の大きさが違っていたら?
 方針が立て難いので、2段式コイルガンを試作して実射するのが良さそうに思える。まだシミュレーションが近似に近似を重ねたものであるため確たることは言えないのだが、鉄心効果を無視した場合とんでもない概算が出ている。

 2段式コイルガンが単段式コイルガンの3倍以上のパワーを出せるという概算である。下手すれば4倍に迫る。
 磁場合成のアイデアを先日書いた通り、2段式が単段式の2倍オーバーのパワーを出せる可能性はある。だが、3〜4倍は明らかに大袈裟だ。鉄心効果を無視するとコイル手前に磁場の強い空間が広がるため、そのような計算結果となる。

 つまり、実際に2段式コイルガンを作って初速を測定すれば、鉄心効果がどの程度無視出来ない要素であるか判明しそうなのだ。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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