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2007年4月30日(月) 18:02

多段式コイルガンの回路図

 ゴム銃の場合、初速はゴムの収縮速度で制約を受けるため秒速70メートルあたりが限界となる。コイルガンの優位をはっきりさせるため、パチンコ玉を 秒速100メートルまで加速したいと考えると、規模はどうなるだろう?
 5グラム半のプロジェクタイルだと、27.5ジュールになる。多段式で効率4%を出せたとして、コンデンサーバンクは700ジュール程度を用意せねばならない。電動ガンの8.4Vミニバッテリーを2本直列で使えば、携帯用コンデンサー充電器で700ジュールを15秒程度で充電するのは可能。つまり、電源面では携帯可能となる。

 だが、球形プロジェクタイルでは30段以上にせねばならないと思われる。30段で収まれば超優秀だが、それでもハイサイドの光ゲートドライバーを30個製作し、30本の光ファイバーが這う。別途30本のローサイド信号。製作は考えただけで気が遠くなるし、故障頻度まで考えるととても製作する気分になれない。
 細長いプロジェクタイルなら遙かに製作は楽になるが、遠射の命中精度は期待できない。そんなものは作っても面白くない。純粋な科学的興味ならともなく、撃って遊べるとは思えない。遊べたとしても、すぐ飽きるだろう。

 問題は性能を引き出すために回生型回路を使いたいが、超多段式の場合にパーツ点数が増え過ぎる点にある。パーツが多ければ製作が大変になりコストと時間は掛かり、しかも故障率が増える。スリングライフルを上回る威力の実用的なコイルガンは、非実用的だ。

 ところで、回生型回路はローサイドとハイサイドのIGBTが常に同時にONにしたりOFFにする。それなのになぜ、わざわざ2つのスイッチング素子が必要なのか?
 別に自分が冗長な回路を考えたのではなく、例のイタリア人もやはり2つの素子を使っている。

 最初にコイル電流を流し始める時は良いのだ。
 別にスイッチング素子が1つであろうと2つであろうと。

 問題はOFF時にある。仮に、ハイサイドのIGBTが無ければどうなるか?
 回生したいコイル電流がフライホイールを作ってしまう。ハイサイドのIGBTはOFFになることでフライホイールが出来るのを防止し、コイル電流がコンデンサーに行くしかないようにするのだ。

 では、コイル電流の回生先として別にコンデンサーを設けるとどうなるか?
 この場合はハイサイドにIGBTが無くてもフライホイールが形成されず、すんなりC2に回収される。

 ローサイドのIGBTがONの時は、C1の電圧がC2を上回らない限り、D1が導通することはない。

 コイルに電流を与えるコンデンサーC1と、電流を回収するコンデンサーC2。両者を分ければハイサイドIGBTは不用となり、共通にすれば必要となる。

 従って、2段式コイルガンにおいてコンデンサーを2つ用意し、互いに電源と回収先を交換すればハイサイドのスイッチング素子は不用となる。

 しかし、1段目と2段目のコイルは特性が異なる。コイルガンの1段目と2段目の条件が同じということは、あり得ない。それなのにコンデンサーを分離し別々に回収を行えば、トータルの効率が低下するのは避けられない。
 ハイサイドの素子を廃止することが目的化してしまい、本来の目的が見失われている。

 では、例えば4段式コイルガンで、こんな回路はどうだろう?
 両端はハイサイド素子も備えた普通の回生型回路。真ん中の2つは回収先のコンデンサーを1つ銃口寄りとし、ハイサイド素子を廃止する。

 射撃開始すると、まずコイルL1とL2に同時通電する。ストームタイガーの主砲コイルと同じ制御でスタートだ。

 続いて、1段目のIGBTをOFFにする。コイルL1の電流はC1に回収され、その場でコイルL2の足しにされる。コイルL3に通電開始し、C2の電圧を定格より下げておく。これにより、C2に回生電流を受け入れられる。

 ここで、2段目のIGBTをOFFにする。コイルL2の電流はC2に回収され、その場でコイルL3の足しにされる。コイルL4に通電開始し、C3の電圧を定格より下げておく。これにより、C3に回生電流を受け入れられる。

 コイルガンにおいては、砲尾側から銃口側へと順番に通電すると決まっている。よって、回生先を銃口寄りの隣接コンデンサーとすれば、無駄は生じない。そして、電源と回収先が異なるためハイサイドの素子は不用となる。
 どんなに段数が増えてもハイサイドの素子が必要なのは両端の2カ所だけであり、それ以外は不用となる。30段のコイルガンなら、28段はローサイド素子だけで良い。そして、ローサイド素子は1KΩでPIC直結という超手抜きで動作可能だ。

 もちろんハイサイドが無いと、コイルの初期通電でスイッチングが遅いという問題が生じる。コイルサージを抑止するために、わざと遅くしている。50μ秒程度を要する。
 しかし、実際のOFF→ON動作は最後の10μ秒程度で行われるのであり、若干のスイッチングロスは発生するが大勢に影響しない。また、センサーでプロジェクタイルの位置を検出しないシンクロトロン型であれば、遅延も問題とならない。

 その一方で、メリットは数多い。
 全段回生型という最高効率を出せるコイルガンが、少ないパーツ点数で製作出来る。皮肉なことに、「両端」しかないストームタイガーのような2段式が一番損をする (^_^;)
 L1からL3までのコイル電流はすべて再利用され、最後のL4だけ次弾用に余る。段数が増えるほど再利用率が向上する。後は合成磁場が最高の位置でプロジェクタイルを吸引するよう適切なタイミングでスイッチングを行うだけだ。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(1)] [TB(0)]

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Comments

『一部修正』

 この回路図では、GND共通化がヤバいかもしれないため、試作までにはもう一段煮詰める必要がありそうです。
 メインの回路図だけでなく、各コンデンサーの充電配線とかローサイドIGBTのゲートドライブとか、微妙な問題が絡みます。

written by IDK

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