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2007年6月12日(火) 17:18

専用充電器の設計

 現在コイルガンの実験には、ストームタイガー用のコンデンサー充電器を使っている。これは、ストームタイガー正式搭載充電器の耐久試験&動作実績の積み重ねをも目的としている。しかし実際に搭載され実験システムから退場する日も近い。そこで、コイルガン10用に充電器を作らねばならない。そもそも、ストームタイガー用は3ワット級なので能力不足だ。
 コイルガン10は実験後に大型コイルピストルに仕立てる予定なので、どうせなら充電器はコイルピストルでもそのまま使えるものにしたい。

 コイルガン10は約200ジュールを投入する。これを実用的な時間で充電するなら、20ワット程度の能力が欲しい。
 使用バッテリーは7.2Vか8.4Vだが、充電直後は電圧が高く消耗したり高負荷時は電圧が下がることを考えれば、コンデンサー充電器は6〜9.6Vを受け入れ可能とすべきだ。最低の6Vで20ワットを発揮するには、平均3.3Aが必要となる。昇圧チョッパーにおいては電流はノコギリ波近似の変化をするから、ピーク電流は倍の6.6Aが欲しい。
 更に、充電ロスもある。昇圧チョッパーは通常のコンデンサー充電の限界とされる50%よりも高い効率が出るが、それでもピーク10Aは確保したいと判断される。

 さて、昇圧チョッパーの心臓部はチョークコイル。大電流を流したい場合、全体の形状の都合もあり複数コイルを並列使用したくなる。サイズが手頃なピーク8Aのコイルを2つ、ハンダ付けで簡易に並列。ピーク16A。これでインダクタンスを実測してみる。
 測定周波数1KHzでも10KHzでもほぼ66μHとの結果になった。

 66μHのコイルとは、66Vの電圧を加えた場合に1マイクロ秒ごとに電流が1Aずつ増大するということだ。10マイクロ秒で10Aに達する。電圧が下がるほど電流の増大ペースも緩やかになる。加える電圧が6Vになれば増大ペースは11分の1となり、10A到達は110マイクロ秒後となる。
 ここで、電圧が1.6倍の9.6Vなら、110マイクロ秒では16Aに到達する。通電時間を110マイクロ秒とすれば、仕様的にピッタリである。バッテリー電圧が最低でもピーク10A流せ、最高でもコイル仕様のピーク16Aに収まる。

 110マイクロ秒より長くすれば、途中で電流制限が働いてしまい性能が低下する。逆に短くすれば、充分にピーク電流が上昇するまで連続通電されず性能が低下する。だったら110マイクロ秒に合わせれば済むかと言えば、バッテリー電圧の変動が悩ましい。
 110マイクロ秒ではバッテリー6Vの場合にピーク10Aまでしか流れない。もっと通電時間を伸ばせば更にピーク電流を大きく出来て性能がアップする。しかしそれではバッテリー9.6V時に途中で16A制限が働いて性能がダウンする。バッテリー電圧が変われば、最高性能を出すための連続通電時間が変わるのである。
 単純なDCコンバーターとコンデンサー充電器の差もある。DCコンバーターは出力リップルが重要だが、コンデンサー充電器は供給ワット数が重要だ。DCコンバーターはリップルを押さえるためにインダクタンスを余して使うのが通常だが、コンデンサー充電ではリップル無視でコイル性能をギリギリまで使い切りたい。

 今回のインバーターでも、ピーク性能を発揮出来るバッテリー電圧をどこに設定するかが問題である。ラジコン戦車に搭載しラジコンバッテリーで動作させるなら6.5V近辺を狙いたい。しかしコイルピストルで小型の電動ガンバッテリーを使うなら8V近辺を想定するのが良いだろう。
 また、ピーク16Aのコイルに16A一杯まで流すのはリスキーだ。飽和しなくても負荷が大きくコイルが発熱しがちである。特にスペックの割に小さなコイルを選択した場合は。
 これらいろいろな条件を考慮して、コンデンサー充電器のスペックを決定する。基本はストームタイガー用であり、それを一部改造という形だ。

 ピーク電流制限を12.5Aとし、連続通電時間を120マイクロ秒前後に想定してみる。バッテリー電圧は充分に高いのでDCコンバーター制御ICには安価なMC34063を使うとする。タイミングコンデンサーは4000pFが適切だ。そんな容量のコンデンサーはなかなか無いのだが、これまでの実験より複数のコンデンサーを並列接続しても代用可能と分かっている。

 ストームタイガーで成功したように、出力電圧検出にはLMC662を使う。MC34063やNJM2360内蔵の電圧計は精度が低い。基本で5.6%、高精度タイプで2%しかない。330Vだと2%でも6.6Vの誤差である。これに対し、基準電圧ダイオードとOPアンプを使えば桁違いの精度が得られる。多段式では初期条件を一定にするのが重要であり、安易に内部機構で済ませるべきではない。
 内部機構はこれもストームタイガー同様に、REMOTE端子の代用とする。単にセイフティーとして使う。

 単一電源で済むため少しだけ簡略化されている。また、充電完了はLED点灯で分かるようにした。LMC662の供給絶対定格が18ミリアンペアなので、直結でもシグナルとして実用的な明るさにLEDを輝かせられる。

written by higashino [コイルガン] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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