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2009年9月4日(金) 21:18
IGBTのデータシートを開き、逆耐圧を調べる。ところが、どこにも記載されていない。
じっくり見て行くと、代わりにとんでもない注釈に気付いた。dv/dt 制限なんてあったのか!
FET等の思いがけない破壊原因として di/dt なら良く知られている。電流の大きさが急変すると壊れるというものだ。ところが、コイルガンの放電に於いては常に回路の一部にコイルが入っている。そのため、電流の大きさが急変することはあり得ない。di/dt で問題となるのは通常、マイクロ秒あたり100アンペア単位の変化量である。数百ボルトを数百マイクロヘンリーのコイルに流す場合は、それより2桁小さな変化しか発生しない。現実の素子は理想素子ではないと言ってもこのレベルになるとまず心配ない。
しかし逆に言えば、コイルガンばかり扱っていると di/dt を気にしなくなってしまう。後は過電流と過電圧に注意すればOK。そんな感覚だった。そこに降って沸いたのが
dv/dt だ。電流ではなく電圧が急変すると壊れる。ターンオフでは注意しろと書いてある。
普通ターンオフで問題となるのは急激な電圧上昇すなわちサージである。それに関してはメインの敵とみなして対策に苦労して来た。だが、注釈には電圧の傾きとあってどう読んでも急激な電圧「降下」の方も含まれる。
普通は、di/dt を抑え込めば dv/dt も抑え込まれる。だがここに伏兵あり。回生型放電回路では、回生用ダイオードが導通した瞬間に電圧が急降下する!
なんてこった。
今一度IGBT-L2の+電位変化を見てみよう。回生用ダイオードが導通した瞬間の電圧降下は、このIGBTの dv/dt の限界であるマイクロ秒あたり400Vという変化量を超えているように思われる。これは約150Vからの放電であり、約200Vからの放電では遂に壊れたというのは波形からして極めてありそうな話である。
ところで気になるのは、ダイオードの導通電圧が高過ぎることだ。回収先のコンデンサーは充電されていないので、ほんの1Vも上昇したら導通するはずだ。それが、充電済みコンデンサーとほぼ同じ電圧になるまで導通していない。これは回路図を眺めればすぐ気付いた。2段目のコイルだけは接続されているため、コンデンサーバンクC1からC2には電荷が移動出来る。C1だけ充電しているつもりで実はC2も同じ電圧に充電してしまっていたのだ。
ただし怪我の功名とも言えるもので、充電先コンデンサーの電圧が高いほどサージ電圧は上がる。それだけ高負荷の試験になる。
ともあれ、最有力容疑者が浮上した。dv/dt
シミュレーションでコイル電流の変化を予想し、過電流にならないよう設計した。
サージ電圧が定格を超えないような動作を考えた。
di/dt は明らかに大丈夫だった。
実際に何千発も無事に発射出来た。
それが今回あまりに簡単に低めの電圧で壊れまくった。犯人が dv/dt だとすればまさにノウハウに開いていた大穴だ。正直、考えたこともなかった。
これまで作った回生型回路は2段式に過ぎず、放電用コンデンサーと回生用コンデンサーは同一だった。4段式になって初めて、両者が別のコンデンサーになった。これにより、回生用ダイオードが導通した瞬間の電圧降下が急激になったという可能性が高い。本当に電圧降下が急になったとは断定できないが、dv/dt
に対策を施して IGBT が壊れなくなれば確定扱いで良いだろう。
written by higashino [コイルガン戦車 1/24] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
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