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2012年1月1日(日) 18:19

人類には少しだけ早過ぎる

1)レーザー戦車
2)コイルガン戦車修理
3)コイルライフルかマルイのバトルタンク改造

 去年の正月に書いた予定によれば、レーザー戦車の製作で1年が終わると予想されていた。仮に1年も費やすことなくレーザー戦車が完成すれば、次の優先順位はコイルガン戦車の修理だった。
 しかし実際は、1)が完成せず2)は行なわれず、かろうじてバトルタンク改造が行なわれただけ。それも優先順位は最低なので、他プロジェクトが停止中に進めただけだ。

 先日書いたように、レーザー戦車には光ファイバーの曲げ半径という致命的な誤算が発生し、プロジェクト頓挫。
 コイルガン戦車は修理の成否が不透明なので、優先順位を下げた。
 今年はレーザー銃を完成させたうえでグリーンレーザー再挑戦と行きたいが、1年後にどうなっているかは分からない。
 ともあれここでは、コイルガン戦車やコイルライフルを進めなかったのはなぜか、書いておきたい。

 コイルガンは危険な電子工作ネタとして非常に人気があり、あちこちで「これ武器じゃないか」レベルのものが作られている。しかし、銃刀法で規制しようとする動きはない。相変わらず、ガチの武器として見た場合は実用に遠いのである。
 そんなことはないと感じられる動画も公開されているが、武器としてはスリングライフルの方がまだマシという状態に変わりはない。
 コイルガン自体、1900年に特許が取得されている。19世紀最後の年に特許取得され、21世紀になっても武器としては実用化されていないのである。
 威力という面では、ネックとなっているのがコイルで消費されるジュール熱。よって、常温超伝導が実用化されるまでは解決しない。それも、数百アンペア以上を流しても超伝導状態を保ってくれねばならない。例えこれが解決されたとしても、火薬銃に対して構造が複雑になるデメリットは変わらない。故障し易く、信頼性で遙かに劣る。泥混じりの水溜りに落としてしまった後でも安心して撃てるコイルガンなど、ちょっと想像し難い。
 恐らくは無音の暗殺用として、特殊な兵種が装備するあたりが関の山だろう。かなり先の未来であっても、武装の主役は張れそうにない。まあ暗殺用に有効となったら、一般向けには何らかの規制が行なわれるかもしれないが。

 さて、もう少し現実的な世界を見てみよう。常温超伝導は無理として、コイルガンの効率を上げるため多段式が流行っている。ただ、その大半はスイッチング素子をターンオフさせていない。全長を短くし、効率も高めようとすると、電流がコイルで消費され尽くす前にターンオフさせたくなる。自分が研究しているコイルガンは、そんなタイプである。だが現在のスイッチング素子の技術状況では、コイルガンのターンオフは非常に難しい。そこで大抵の製作者は、多段式コイルガンを作ってもターンオフを避けた設計を行なう。各コイルは完全に独立している。

 誰もがやってることに参入しても面白くない。だから自分としては、コイルガンやるならターンオフとそれに伴う回生電流を活用した独自の方式を突き詰めたい。ところが、それには現在のスイッチング素子が追い付いていない。スイッチング素子を壊しまくってしまい、その原因を追究し、ほぼ結論が出ている。
 スイッチング素子には、守らねばならない定格が数多く存在する。温度、電流、電圧、dv/dt、I2t、などなど。この中で I2t が引っ掛かる。それ以外はストロボ用のスイッチング素子がコイルガンにも適合するが、I2t だけは適合しない。
 ストロボとコイルガンを比較すると、回路のインダクタンスが全く違う。このため、コイルガンのターンオフでは電流二乗時間積が桁違いに大きくなってしまうのだ。I2t を減らそうとスイッチングを高速にすれば、サージが発生し易くなるし dv/dt にも引っ掛かる。

 スペック全てがコイルガンに適合するような理想的なスイッチング素子も、常温超伝導より先に実用化されるだろう。だが、今はまだ駄目だ。人類には、まだ「少しだけ」早過ぎる。
 いまコイルガン戦車を修理したりコイルライフル製造に乗り出した場合、スイッチング素子に過負荷を掛けることになる。または、I2t を満たすためだけにそれ以外がオーバースペックとなる素子を使う羽目になる。

written by higashino [コイルガン戦車 1/24] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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