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2015年9月16日(水) 22:07

導火線

 4本の出力ファイバーを、鉄のバイスに固定。
 先端の位置を揃えないと、隣接ファイバーの放射が怖いので注意する。
 テープの幅が1センチだ。

 ビデオカメラは行方不明のままだが、試しに最大出力まで上げてみることにする。一瞬だけなら、どこか燃えても致命傷にならないだろうし無事に最大出力が出せればパワー測定ぐらいは可能となる。
 燃えないまでも異常に赤外線が漏れる箇所があるかもしれず、品質をより確実に確認するためにはどうしても赤外線カメラは必須である。しかし、無くても確認できることはある。

 励起LDが無事に集約されているかどうか、出力は想定通りに出ているのかどうか。それらはレーザー銃を成功させるうえで天王山(あるいはその1つ手前)に相当する山場だから、一刻も早く確認したいのだ。
 ビデオカメラがロストしてしまっても、赤外線カメラは購入可能である。レーザー趣味には絶対不可欠なのでロストが確定すれば新規購入止むを得ない。しかし、後から発見したら、カネがもったいなかったということになってしまう。よって、ビデオカメラ探しは続行しつつ、可能な試験は実施する。

 最大出力を1秒ほど出したら、4本のうち2本の光ファイバーが燃えた。
 正確には、燃えたから即座に出力を落とした。

 石英ガラスでできた光ファイバーが、まるでプラスチックファイバーであるかのように消失している。
 鉄のバイスに固定したのは燃焼対策ではなく、転倒すると光ファイバーを傷めるので安定しまくっている台をということで選択した。だが、結果的に助かった。

 目視した限りでは、励起LD筐体の光ファイバーや融着部分には異常は無い。ただしこれも、隠れた位置が少し焦げていても分からない。赤外線カメラがあれば、焦げるような場所は即座に発見できるのだが。とはいえ、筐体側の工作はうまく行っている可能性がそこそこある、と判明したのは少し前進ではある。

 光ファイバーが燃えるのは半ば想定しており、先端を水中に突っ込んでおくとかしないと最大出力は無理かもしれないと想像していた。今回は、駄目元で決行した部分はある。
 もちろん撮影していたので、発生した現象をコマ送りでチェックする。

炎上動画は、こちら。

 励起LDを光らせると、PC出力側の4本の光ファイバーは揃って先端が光る。これを見る限り、4本ともしっかり励起光は到達しているようだ。不良品と思われるセットは無い。

 このフレームは、1本目が燃える1フレーム手前のものだ。

 最初に燃えたのは一番手前の光ファイバーだが、先端ではなく少し手前に光点が確認できる。

 強烈な輝きが発生。
 光ファイバーが、燃え落ちる。

 石製ガラスの融点は1200度ぐらいあるのだが・・・
 PC出力側のファイバーが1メートルぐらいある中で先端付近が燃え、しかも最先端ではない。これは何を意味するか?
 クラッド外殻に付着したゴミのために励起LD光が漏れ、ゴミが過熱炎上した可能性が高い。
 クラッドが被覆に覆われている部分では、クラッド外殻にゴミが付着することはない。

 そしてこれは、2本目が燃える1フレーム手前のものだ。

 1本目の光ファイバーは、燃え続けている。

 2本目が炎上。
 炎上部分より先端の光ファイバーは燃えておらず、折れ落ちようとしているシーンが捉えられている。

 そしてこの後は1本目同様、まるで導火線が燃えるように光ファイバーが消失していく。

 残る2本は、無事である。
 先端の輝きを見る限り、2本だけ特別に光出力が小さいようには思えない。やはり、被覆除去部分のゴミが励起LD光を漏洩させてしまったのが2本だったということだろう。

 PC出力側はダブルクラッドファイバーである。シングルクラッドと異なり、ダブルクラッドはクラッド部分にも光が通る。光ファイバーは、光が通る部分の外側の屈折率が低くなっていることで、光を閉じ込める。よってダブルクラッドの場合、クラッドの外側の屈折率がクラッドより小さくなっていなければならない。
 そのため、被覆材料は、屈折率が低くなければならない。被覆を除去すると、クラッドの外側は空気である。空気は大抵の固体より屈折率が小さいため、問題なく光が封じ込められる。
 だが、空気中のゴミが付着し、運悪くその付着部分が光を通して屈折率も高かった場合、そこから光が漏洩する。

 漏洩光がゴミを燃焼させて高熱を発すると、光ファイバーが加熱される。
 光ファイバーは1200度ぐらいの耐熱性があるが、600度近くなると透明度が低下する。ある限界を超えて透明度が減少すると、励起LD光が吸収されて熱に変わり、それが更に光ファイバーを加熱する。こうして光ファイバーが炎上すると、励起LD光が炎上点で吸収されて熱に変わり、継続的に燃焼が続いてしまう。かくして、光ファイバーは導火線状態になる。

 予測可能な範囲の結果だったとはいえ、実際に発生してみると今後に有用な経験となった。
 これまでの融着と異なり、今後はダブルクラッドファイバーを融着せねばならない。被覆除去部分の処理と排熱対策は確実に行わねばならず、やらかしたら光ファイバーが燃えるだろう。

written by higashino [ファイバーレーザー] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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