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2006年8月31日(木) 17:33

440V

 コッククロフトを利用する場合に留意すべきことは他にもある。それは、高電圧を発生させる回路本体がどんな構造になっているかだ。出力電圧の波形が全く同じであっても、コッククロフトが効果を発揮する場合としない場合がある。

 今回設計した昇圧チョッパー回路の場合。
 スイッチングFETがOFFになると、ONの間にコイルに蓄積されたエネルギーは一気に放出される。

 コンデンサーに蓄積されたエネルギーを一気に放出すると、電圧は同じで大きな電流が発生する。エネルギーが抜けるに従って電圧が低下する。
 一方、コイルに蓄積されたエネルギーを一気に放出すると、電流は同じで大きな電圧が発生する。エネルギーが抜けるに従って電流が低下する。こうして昇圧が実現する。

 この高電圧でコッククロフトの根元コンデンサーC1が充電される。
 ここで充電された電荷は、ターゲットの大容量コンデンサーへと漏洩することはない。

 標準的な昇圧チョッパーとはD1の位置が違う点に注意。普通はFETより出力寄りに置く。しかし今回はFETよりもコイル寄りに置く。

 続いてスイッチングFETがONになると、コイルにエネルギーが蓄積される。
 コイルの充電はコンデンサーの充電と違ってイメージを浮かべ難い。流れ続ける電流としてエネルギーが溜まるため、コンデンサーのようにパーツだけを切り出して「はいたっぷりエネルギー溜まってます」と見せられない。

 ここで、先にチャージされたC1の電荷がC2に移動する。この図を見ればD1の位置が変わった理由は明白だろう。標準的な昇圧チョッパー回路のままでは、コッククロフトを接続しても全く効果が無いのである。

 更に、ターゲットの電圧が低い場合はC2の電荷がターゲットに抜ける。このため、C1に蓄積された電荷の大半が吸い出される。しかしターゲットへ電荷を送る供給源はコッククロフト部分であり、バッテリーが消費されることはない。
 C1の電圧がバッテリー電圧より低くなるとバッテリーからC1にも流入するが、C1がバッテリー電圧まで充填された時点で流入は止まる。ここでC1に溜まった分は、次にFETがOFFになった時にC1をチャージするのに要するエネルギーを小さくするので、差し引き同じ。

 こうしてコッククロフト部分は電力レギュレーターとして働く。
 (C1に蓄積されるジュール数)×(スイッチング周波数)を上回るワット数は出て行かない・・・はずだがまだ確認出来ない。いずれにしろこの回路は動作がかなり綱渡りっぽい。本当に動くのか?

 大丈夫、コッククロフトが動作することは仮組みの状態でも確認出来た。ATX電源で動かし、各コンデンサーに220Vが蓄積され、440Vを実現した。目標の330Vを無事にクリア!
 以上を元にバージョンアップした昇圧回路がコレだ。

 D1はコイル充電時に大電流が流れるため、耐圧と耐電流の両方を要求されてしまう。スイッチングFETと同じ運命だが、FETに比べればまだ低コストなので我慢する。
 出力電圧検出はFETのスイッチング・デューティー比を変える役には殆ど立たない。ターゲットコンデンサーの電圧をモニターしてるのに近い。要はコイルの発生電圧をほぼ常時MAXにキープすることでワット数を稼ぐ戦術だ。秋月インバーターの思想をマネてみた (^_^;)

 コイル電圧を抑えればFETの耐圧は250Vで充分。しかし電圧MAX垂れ流しだとバッテリー17Vで発生可能な高電圧も考慮せねばならず、耐圧300V無いと安心出来ない。250Vと300Vの差は微妙。入手可能なFETが違うのだ。

型番 耐圧 耐電流 ON抵抗 許容損実 ゲート容量
2SK2995 250V 30A 48mΩ 90W 5400pF
2SK1486 300V 32A 80mΩ 200W 3500pF
2SK3132 500V 50A 70mΩ 250W 11000pF

 250Vで良ければぐっとON抵抗を減らせる。しかし、絶対に250Vを越えないよう確実に制御するのは面倒だ。単に電圧検出抵抗を調整するだけでは済まない。リップルを減らせるだけのコンデンサーをぶら下げねばならず、コッククロフトの動作に支障が考えられる。
 300Vはゲート容量が小さいので2パラで使えばON抵抗0.04Ωとなる。2SK1486 は 3132 ほど高くはないが高価には違いないので、性能優先の豪華コースとなる。当面は 3132 のままで組んでみよう。

 ターゲット・コンデンサーの電圧が高くなるとC1の電荷が充分に吸い出されず、出力ワット数が激減する可能性がある。実際に試してみて抜けが悪いようであれば、電力レギュレーターとして使うのを諦めることになるかもしれない。

written by higashino [パルスレーザー] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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