Darkside(https対応しました) |
2009年12月12日(土) 18:12
SHG結晶による波長変換は、条件によって効率が桁違いに変わって来る。条件は数多い上に、互いに反していたりするのだ。
1)素材
当然ながら基本的には結晶の種類が変換効率を左右する。極端な話として単なるガラスの塊では、以下の条件を幾らいじっても変換効率はゼロである。1064nm → 532nm の波長変換では、KTPやLBOが良く使われる。
2)ビーム径
結晶内のレーザービームが細いほど、変換効率が上がる。
ビームはレンズの焦点距離が短いほど細く絞れる。
また、レンズ入射時のビームは太い方が、レンズで細く絞れる(これは誤解されている場合が多い)。
3)入射許容角
結晶に対して斜めに入射した光は、変換効率が低下する。どの程度斜めな光を許容するかは、結晶によって違う。
問題は、2)とトレードオフになること。焦点距離を短くしたり入射ビームを太くすれば、ビーム周辺は斜めになる。すると、入射許容角に引っ掛かってビーム周辺は波長変換されなくなってしまう。
4)損傷閾値
ビームが小さく絞られると、エネルギー密度が高まる。高まり過ぎると結晶が破壊されてしまう。そもそも破壊力があるからこそレーザーが工業利用されているわけで・・・
エネルギー耐性が劣る結晶では、変換効率を上げられない。共立モジュールのレベルではなく数十ワットの変換を狙う場合には、深刻。
5)結晶の長さ
結晶が長いほど変換効率が上がる。
しかし、レンズで絞るとビームが細い部分は一部なので、長くても余り意味がなくなる。絞らなければ長さに意味が生じるが、今度は全体的にビームが太めになってそっちの意味で変換効率が上がらない。
6)ウォークオフ角
波長変換後のレーザーは、波長変換前と異なる向きに放出される。
これが大きいと、長い結晶が使えなくなる。変換効率にも悪影響がある。
7)温度許容幅
結晶の温度が変化すると、変換され易い波長が変化する。
目的とする波長を変換し続けるには、結晶の温度を最適値にキープせねばならない。どの程度の温度変化を許容するかは、結晶によって異なる。また、温度が変わると4)や6)が変化する。
LBOでは数度以内、できれば1度以内の誤差で温度管理したい。
以前LBOで極端に変換効率が低かったが、有力な原因候補が結晶温度だ。
また、数十ミリワット級モジュールのKTPに数ワットの励起レーザーをブチ込んだとき、一瞬だけ強力なグリーン発光してアッという間に暗くなった。それも、結晶温度の変化が原因と思われる。
こうして並べると、2つの条件に分かれることが分かる。
1つは、SHG結晶の特性。もう1つは、入射ビームに対する光学系の特性。両方を総合したベストな選択を考えねばならない。特に光学系に関しては最適なものが何であるか、やってみなければ分からない。
また、変換効率には直接関係しないものの、SHG結晶の多くが湿気を嫌う。保存・使用に際しては除湿に注意せねばならない。以前使っていたLBOがボロボロになったのは、湿度管理を怠ったためと思われる。
いずれにしろ、適切な結晶を選択し、適切な条件で使用し、適切な光学系にYAGレーザーを通す。それで初めて高い変換効率が得られるのである。YAGレーザーは既に発振しているから簡単にグリーンレーザー出るでしょ? なんて話じゃない。
written by higashino [パルスレーザー] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]
Generated by MySketch GE 1.4.1
Remodelling origin is MySketch 2.7.4